成長市場を支えるメインプレイヤーになる可能性も
このカンファレンスイベントの前日にはファクトリーツアーも行われた。「スモール・ジャイアンツ アワード2019」でグランプリを受賞したアトツギ企業のHILLTOPのオフィスと工場の見学もさせていただいたのだが、まるでIT企業に来たような洗練されたオフィスの雰囲気に大変驚いた。この機会とは別に、大阪府八尾市にある同じくアトツギ企業の友安製作所を訪問したときも、おしゃれなオフィスやPCの配置に驚いたことがあったが、こうした若い後継者が経営する歴史をもつ製造業の会社に共通しているのは、デジタルテクノロジーを当たり前に使ってきたアトツギが家業に入ることにより、DXが一気に進んだということだ。HILLTOPに関しては何十年も社内で積み重ねられてきた技術やノウハウをすべてデータ化し、AI技術を適用することで、入社数カ月の社員でも一定レベルの設計が可能になる組織構造をつくり上げたという。それにより従来よりも大幅に納期が短縮され、コスト競争力もアップした。これらの強みを生かして電気自動車(EV)用モーターなどの成長領域でも、企業価値を発揮することができている。
ともすると、こうした製造業は古い業界だと誤解されがちだが、長く磨いてきた技術やノウハウをもとに、成長市場に帆を当てた新しいチャレンジをしていくことで、例えばEVなど最先端の成長市場を支えるメインプレイヤーに躍り出ることすら可能である。積み上げてきたものとデジタル技術のかけ算がどういった進化をもたらすか、これからも注目していきたい。
なかやま・りょうたろう◎マクアケ代表取締役社長。サイバーエージェントを経て2013年にマクアケを創業し、アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」をリリース。19年12月東証マザーズに上場した。