国際航空運送協会(IATA)とS&Pグローバル・コモディティ・インサイトのデータによると、ジェット燃料価格は8月4日までの週の平均価格が1バレルあたり119.82ドルと、7月7日までの週の同97.78ドルから1カ月弱で23%近く上昇した。また、8月4日までの週の終値の積載日確定後のブレント原油価格は85.55ドルで、週平均のクラック・スプレッド(原油価格と石油製品価格の差)は34.27ドルだ。
だが最新の航空旅客データとその動向を掘り下げてみると、ジェット燃料価格の上昇は主にアジア太平洋地域の航空旅行市場の顕著な回復によるものであることがわかる。
IATAが発表した最新の数字は特に示唆に富んでいる。8月7日の発表によると、6月の世界の総航空輸送量は前年同月比31%増となった。
さらに、2023年第2四半期末の世界の航空輸送量は、新型コロナウイルス流行以前の水準の94.2%に回復。2023年上半期の航空輸送量は前年同期比47.2%増だった。コロナ後の業界の回復の勢いがほぼ持続していることを示している。
また、地域別に見ると、アジア太平洋地域の航空会社の6月の輸送量は前年同月比128.1%増だった。これは世界で最大の増加率だ。アジア太平洋地域の総座席数は115.6%増加し、座席利用率は4.6ポイント増の82.9%となった。
他地域の輸送量の伸びはアジア太平洋地域ほどではなかったが、それでも目覚ましいものだった。各地域の伸びは欧州が14%、中東29.2%、北米23.3%、中南米25.8%、アフリカ34.7%だ。
もちろん、アジア太平洋地域が最大の要因となっているとみられるものの、北半球の夏の旅行シーズン到来に伴う航空旅客数の増加がジェット燃料価格に影響するのは予想できることだ。
ジェット燃料価格の上昇には地域特有の影響もある。例えば、欧州の場合、IATAとS&Pグローバル・コモディティ・インサイトは、ジェット燃料を含む中間留分の価格が、現地の製油所の問題とスエズ以東からのディーゼル到着量の減少が重なったために急騰したと指摘している。また、製油所の混乱が大西洋岸への供給ひっ迫に拍車をかけたため、米国のジェット燃料価格は第2四半期末にかけて上昇した。
だが、原油供給がひっ迫している(との見方がある)中で、世界の旅行・観光業界がコロナ前の水準への回復を続けていることは間違いない。全体的な旅行需要が依然としてジェット燃料価格上昇の原因であるため、多くの航空会社が燃料費ヘッジ戦略を早急に見直すことが予想される。先行して見直しを行っている航空会社はダメージを抑制できるだろう。
(forbes.com 原文)