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2023.08.15 08:00

AIブームで急成長、台湾の半導体メーカー「アルチップ」の野望

2人の共同創業者は、それぞれの役割で深い専門知識を持っている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校で電子工学の学士号を取得したシェンは20年以上、集積チップ事業に関わり、アルチップを設立する前は、現在同社の会長を務めるクワンが設立したAltius Solutions(アルティウス・ソリューションズ)に勤務していた。

イリノイ大学でコンピュータ工学の学士号を取得したクワンは、2001年にアルティウス社をソフトウェアサプライヤーのSimplex Solutions(シンプレクス・ソリューションズ)と合併させた後に、米国のチップ企業Cadence Design Systems(ケイデンス・デザイン・システムズ)に3億ドルで売却した。

世界5社が市場を争う最先端チップ

アルチップは、7ナノメートル以下の最先端チップの設計をさらに深化させ、参入障壁の高いビジネスを囲い込む堀を築きつつある。現在、同社には直接的な競合がおらず、類似した製品を製造しているのは、中国のGlobal Unichip(グローバル・ユニチップ)や米国のMarvell Technology(マーベル・テクノロジー)を含む5社のみとなっている。昨年のアルチップの売上の68%を、7ナノメートル以下のカテゴリのチップが占めていた。同社は、競争に勝ち残るために2022年と2021年に約6900万ドルを研究開発に投資した。

調査会社ガートナーのアナリストのアラン・プリーストリーによると、チップの小型化が進むにつれ、最先端セグメントへの参入障壁は高くなるという。玩具のような単純な用途向けのチップの開発コストは1000万ドル程度だが、AIなどの高度なアプリケーションの場合、企業は約3億5000万ドルを開発に投じるという。「高度なチップの設計や開発は、大量のリソースが必要で困難がともないます」とプリーストリーは述べた。

中国からの撤退と米国へのシフト

アルチップは、これまでいくつかの困難に直面した。同社の最大の顧客の1つだった中国のTianjin Phytium Information Technology(天津飛騰信息技術)は、中国の大量破壊兵器の開発に関与したとして2021年に米国の禁輸リストに追加された。この発表を受け、アルチップの株価は5日間で50%下落し、約4億6000万ドルの時価総額が吹き飛んだ。アルチップはTianjin Phytiumからの新規受注を即座に停止し、失った収益を主に米国の新規の顧客からの受注で補っている。
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編集=上田裕資

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