「今から10~15年後に、企業の財務担当者やCFO(最高財務責任者)がスイフトではなく、Thunesを使って送金することが当たり前になったら素晴らしいことだ」と、ピーター・デカルウェ(Peter De Caluwe)最高経営責任者(CEO)は話す。
Thunesの目標は、決して同社の実力に不相応ではない。同社は、この2カ月でVisaやシンガポール政府傘下の投資会社EDBI、ユニコーン企業のCarroの出資元のEndeavor Catalyst、英国の大手ヘッジファンドMarshall Waceなどから、7200万ドルを調達している。先月クローズしたシリーズCラウンドでThunesの累計総額額は2億200万ドルに達し、評価額は9億ドル(約1300億円)となった。
銀行間のネットワークであるスイフトに対抗して、Thunesは132カ国を対象に、40億の銀行口座と30億のモバイル・ウォレットへの送金を可能にしている。Thunesの主な市場は、バングラデシュやインド、インドネシア、ナイジェリア、パキスタンなど、銀行口座を持たない人口が多い新興国だ。
Thunesによると、同社独自の送金インフラを使うことで、スイフトに比べてコストを最大90%削減でき、取引の大半は30分以内に完了するという。主な顧客には、フィンテック大手のペイパルやRevolut(レボリュート)、東南アジアの配車・宅配大手のグラブ、ドバイ商業銀行、アフリカのモバイル送金プラットフォームのM-Pesaが含まれる。
「Thunesは、法人向けクロスボーダー決済の新しいリーダーであり、急成長を遂げている。同社は、特に新興市場で大手グローバル企業の決済インフラを支えている。Thunesはシンガポールで設立され、同国を拠点に今後の成長を図るつもりだ。だからこそ、われわれが支援することが適切だと考えた」と、EDBIのポール・エン(Paul Ng)CEOは話す。
新たな資金を調達したThunesは、世界最大のモバイル決済市場である中国でも存在感を増している。11月にはテンセントと提携し、同社が運営するスーパーアプリWeChatのユーザーへの送金を可能にした。
Thunesは、最近中国に子会社を設立しており、同国でのライセンス取得と人員の倍増を目指している。「中国は、電子機器から商品やサービスまで、あらゆる分野で世界最大のサプライヤーで、世界規模で事業を展開するEコマース企業が多く存在する。このため、中国で事業を行うことは、他国の10倍、50倍、100倍の規模につながる」とデカルウェは話す。