同社のコールセンターには毎年約5億件の問い合わせがある。就任当初はその膨大なデータを使いこなせていなかった。まず縦割り組織を横串でつなぎ、ナレッジの横展開やデータ共有を行なった。
「デジタルツールのおかげで意思疎通や情報共有が容易になり、顧客にもスピーディな提案ができるようになりました」
営業現場へのデジタルツール導入は強制ではなく、あくまでも推奨にとどめた。slackでツールの効率的な使い方や成功事例を共有したり、「受注おめでとうチャンネル」をつくったりすることで、自発的にツールをもっと使いこなそうという動機が生まれ、どんどん浸透していった。「ツールやデータが業務に役立つと実感できれば一気に導入は進みます。特に若い世代の反応は早い。経営陣の役割は、ツールの是非を判断するのではなく、現場の成長促進のための環境を整えること」。
個々の業務でも、音声データのテキスト分析や、ハイパフォーマーの使う言葉の抽出など、ナレッジが共有されるようになったことで営業スタイルも変化。顧客の隠れた課題を見つけて解決を図る提案型営業が可能になった。提案の質とスピードが向上し、年間30%の受注増も実現。また顧客からの電話で「ありがとう」と言われる回数を計測すると1日60万回言われているとわかり、こうしたデータはやりがいの可視化につながりオペレーターの定着率向上など好循環をもたらしているという。
もうひとつ、営業効率向上の役割を果たしたのが、ショールーム化をコンセプトに一新したオフィスの存在だ。海外にあるコールセンターの様子も、リモートでリアルタイムに視察できる。「自社のコンタクトセンターを見たいと訪れるクライアント企業が増え、商談機会が着実に増えました」。
デジタルとリアル、両面の変革で体制を整えた同社。22年には創業40周年を迎え、ウェビナーやオウンドメディア等を通した営業先拡大にも挑戦中だ。
「旗を掲げるだけでは会社は変わらない。具体化から実践までの道筋をつくる必要がある。40年の歴史を重ねた会社ですが、ベンチャースピリットで常に変化していきたい」