生体データと引き換えに暗号資産を配る「Worldcoin」が危険な理由

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ワールドコインの開発元のTools for Humanity(ツールズ・フォー・ヒューマニティ)は、目玉のような形をしたオーブを用いて人々の虹彩をスキャンし、ユニークなワールドIDを割り当てている。「オーブにアクセスできるのは、彼らだけなので、IDの作成は一元化されている」と、ニューヨーク大学スターン・スクール・オブ・ビジネスの経済学教授で、ブロックチェーンの研究も行っているAbdoulaye Ndiayeは述べている。

Ndiaye教授は、ワールドコインが、社会プログラムの必要性がありながら、適切な受益者を効果的に絞り込むことが難しい世界の多くの地域で、大きな役割を果たす可能性があると考えている。しかし、同教授は、ワールドコインがユーザーIDを名前や電話番号などの他の個人情報とリンクさせ、そのデータを販売した場合、プロジェクトに関連するリスクが発生する可能性があると警告した。

詐欺容疑のFTX創業者も関与

これに対し、ワールドコイン側は「我々は、ワールドコインが利用可能な市場における個人データの処理に関するすべての法律と規制を遵守しています」とEメールの声明で述べ「いかなるユーザーの個人データも販売しませんし、今後も販売することはありません」と付け加えた。

しかし、ツールズ・フォー・ヒューマニティが、破綻した暗号資産取引所FTXの共同創業者のサム・バンクマン=フリードと関係があることから、ワールドコインの完全性は疑問視されている。

バンクマン=フリードは、2021年にアンドリーセン・ホロウィッツが主導したワールドコインの2500万ドル(約36億円)のシリーズAラウンドに参加したが、彼は、詐欺やマネーロンダリングを含む12の犯罪容疑に直面している。PitchBookのデータによると、破綻したシンガポールの暗号ヘッジファンドThree Arrows Capital(スリー・アローズ・キャピタル)もワールドコインの初期の資金調達に参加していた。

ワールドコインはまた、今年5月にブロックチェーン・キャピタルが主導し、アンドリーセン・ホロウィッツが参加したシリーズCラウンドで1億1500万ドルを調達した。PitchBookによれば、グーグルの親会社のアルファベットもこのラウンドに参加した。
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編集=上田裕資

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