コスメ業界を席巻する米アマゾンの「集中プロモーション戦略」

Sergei Elagin / Shutterstock.com

景気に逆風が吹いているにも関わらず、Ulta Beauty(アルタ・ビューティー)とSephora(セフォラ)の親会社であるLVMH(モエ ヘネシー・ルイ・ヴィトン)は、2022年に過去最高の売上を計上した。しかし、この好業績は、アマゾンのオンラインにおける継続的な台頭を遅らせるには十分ではなかった。

アマゾンは、米国における11の美容・パーソナルケアカテゴリーすべてにおいて、オンラインでのシェアを獲得し続けている。実際、Euromonitor Internationalが最近発表したeコマース市場レポートによると、米アマゾンは2023年第2四半期に、脱毛剤を除くすべてのカテゴリーで前年比でシェアを拡大した。

米国市場においてオンラインで美容・パーソナルケア製品を販売する上位企業のうち、前年に比べて美容分野でのシェアを伸ばしたのはアマゾンとウォルマートだけだ。ただ、アマゾンがシェアの60%を獲得するという大成功を収めたのに比べ、ウォルマートの増益幅はごくわずかだった。

アマゾンが美容専門店に勝った理由

アマゾンは、日常的な低価格、幅広い品揃え、他の追随を許さないロジスティクスを提供することで、美容分野、そして他の多くの分野で勝利を収めている。この戦略により、同社は一般小売業者と美容専門店の双方を圧倒している。アマゾンが手頃な価格を売り物にしている一方で、セフォラのような美容専門店は、自社製品のポジションをよりプレミアムなものとして位置づけ、それに応じて価格を設定している。

オンライン上で非常に幅広い美容品を販売していることがアマゾンが好調である理由の1つだともいえるが、美容品の中でも重要カテゴリーとされるカラー化粧品とスキンケアでもアルタ・ビューティーとセフォラを上回っている。この2つのカテゴリーは、3社にとってオンライン販売の金額ベースで最も大きなカテゴリーである。その結果、これらの分野での業績は、美容小売企業の戦略全体に大きな影響を与えることになる。

ユーロモニターのeコマース調査によれば、アルタ・ビューティーとセフォラの両社は、昨年これらのカテゴリーでオンラインシェアを落とした。この2つのカテゴリーを合計すると、2社の2023年第2四半期の販売額は前年と比べて横這いだ。一方、アマゾンの同カテゴリー販売高は約10億ドル(約1400億円)増加し、シェアを大きくした。

季節性もアマゾンの戦略にひと役買っている。2022年、アマゾンはすべての美容・パーソナルカテゴリーにおいて、第4四半期における過去最高の販売高を記録した。実際、アマゾンは2022年の売上の3分の1をこの期間に生み出したのだ。対照的に、アルタ・ビューティーのオンライン年間売上のうち、第4四半期の売上はわずか27%だった。

この時期は、米国のホリデーシーズンと重なる。買い物客がアマゾンを利用するのは、同社の優れた物流網が予定通りに商品を配達してくれるという信頼があるからだ。ホリデーシーズンやアマゾンプライムデーのような商戦イベントでは、アマゾンは競合他社を最も引き離す時期である。
次ページ > アマゾンのイベント戦略「プライムデー」

翻訳=江津拓哉

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事