医学誌サイエンス・トランスレーショナル・メディシンで9日に発表された論文では、肺以外の臓器に生じる後遺症に関する研究結果が報告された。
米疾病対策センター(CDC)によると、新型コロナウイルスの後遺症の症状には、味覚や嗅覚の喪失、胸痛、息切れ、集中力低下などがあり、感染から回復後も数週間、あるいは数年にわたり続くこともある。
その原因は、ウイルスのタンパク質が、細胞内でエネルギー生産を担うミトコンドリアの遺伝子と結合することで、各臓器の機能障害を引き起こすことにあるとみられている。
新型コロナウイルス感染の際、最初に影響を受ける臓器は肺だが、今回の研究では、肺のミトコンドリア遺伝子発現が回復した後も、心臓や肝臓、腎臓といった他の臓器への影響が残ることがわかった。
論文の共著者であるダグラス・C・ウォレスは「この研究により、新型コロナウイルス感染症を上気道に限定した疾患とみなすことはやめ、複数の臓器に影響する全身性障害と捉える必要がある強い証拠が得られた」と説明。「肺以外の臓器での機能不全の継続が観察されたことからは、ミトコンドリアの機能不全がこれらの患者の内臓に長期の損傷を引き起こしている可能性が示されている」と述べている。
2月に米国心臓病学会で発表された研究結果では、コロナ後遺症によって心血管疾患のリスクが2倍になるとされていた。また、医学誌International Urology and Nephrologyに掲載された別の論文では、コロナ後遺症が慢性腎臓疾患や急性腎臓損傷の一因となっている可能性が示された。
科学誌ネイチャーで2月に発表された論文によると、新型コロナウイルスの後遺症に苦しむ人は世界全体で6500万人に上ると推定される。
最近、医学誌ランセットに掲載された研究結果では、新型コロナウイルスのワクチン接種によって、後遺症の発症リスクを減らせる可能性が明らかになった。データからは、2回接種の方が1回接種よりも予防効果が高まることが示されている。
(forbes.com 原文)