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2023.08.09 10:00

ローマ教皇がAIに警告 「争いや反目」を助長する恐れ

遠藤宗生

AM113 / Shutterstock.com

ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇は8日、人工知能(AI)による社会への影響が「急速に拡大している」との認識を示し、AIは「人類に奉仕する」ように使わなければならないと訴えた。

2024年の「世界平和の日」のテーマを発表したローマ教皇庁(バチカン)の声明のなかで述べた。来年のテーマは「人工知能と平和」と決まった。

教皇はAIには「破壊的な可能性と両義的な効果」があるとし、この新しい技術についての「開かれた対話」を呼びかけた。「争いや反目」を助長しないよう、AIが責任ある方法で使われるように方向づける「緊急の必要性」があるとも指摘した。

そのために、AIは教育や法の観点から倫理的に省察する必要があるとした。AIの発展は「最も弱い立場に置かれ、排除された人々」を犠牲にするものであってはならないとも強調した。

86歳になるフランシスコ教皇は過去に、コンピューターの使い方は知らないと明かしている。一方で、これまでに何度かオンラインで行事を主宰したほか、X(旧ツイッター)のアカウントも持っていることから、テクノロジーの活用に先進的な教皇として称賛も集めてきた。

昨年11月の生成AI「ChatGPT」の公開直後から、AIやそのさまざまな発展・活用は世界中で話題になった。半面、AIの使用や影響をめぐって懸念も持ち上がり、各国で規制も議論されるようになっている。

3月には起業家のイーロン・マスクを含む多数の専門家や起業家らが、AIの開発をこのまま進めれば人類に深刻なリスクをもたらす恐れがあるとして、高度なAI開発の一時停止を呼びかけた

AI研究の第一人者で「AIのゴッドファーザー」と呼ばれるジェフリー・ヒントンも、AIが近いうちに人間を凌駕する可能性などAIの危険性について周知するためにグーグルを退職している。

フランシスコ教皇をめぐっては今年、AIで作成したフェイク画像がネット上で拡散。米紙ニューヨーク・タイムズによると、ほかの多くのAI製画像よりも「いいね」やコメントが多くついていたという。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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