映画

2023.08.11 12:00

単なる娯楽作品ではない。映画「バービー」が放つ、深いメッセージ

主演女優が映画化権を確保

そもそもバービーは、1959年にアメリカの玩具メーカのマテル社が世に送り出した身長28センチメートルの人形で、大人の女性を想定したものだった。

さまざまな衣装を纏わせたり、家などをはじめとした生活様式を用意したりすることで、女性たちの理想を人形の世界で実現し、それまで赤ちゃん人形が主流だった玩具業界にも革命をもたらした。それを映像で表現したのが、作品冒頭の「2001年宇宙の旅」のパロディシーンでもある。

そのバービーの映画化権を確保して、映像化に乗り出したのがこの作品で主役も務めたマーゴット・ロビーだった。彼女はプロデューサーとしても、「バービー」映像化のプロジェクトを中心となって推進した。

「世界中の誰もが知っているバービーは、あまりにも大きな存在。たくさんの思い出とともに多くの人々がバービーに繋がりを感じている。誰も思いつかないような意外で巧みな方法で取り組めば、格別な作品がつくり出せると思った」
ウエスタンルックで人間社会に現れたバービー(c)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

「バービー」映像化に取り組んだ理由を、このように語るマーゴット・ロビーだが、その「格別な作品」の監督に指名したのがグレタ・ガーウィグだった。ロビーは彼女について次のように述べている。

「グレタは傑出した監督であり、脚本家。昔ながらの映画手法を用いながら、この100年間の映画史に対する理解と情熱を注ぎ込み、そこにこの世界で生きる人間に対する現代的な視点を通して描く。それこそがグレタの特に長けたところです」

グレタ・ガーウィグも「バービー」の映画化に取り組んだ理由を次のように語る。

「脚本家や映画監督として、私は常に楽しいチャレンジを探している。『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』もそうだったけれど、バービーは誰もが知っている題材だった。それでもまだ伝えるべき物語があるキャラクターだと感じたし、バービーの伝説を称えながら、予想外の新しい切り口で彼女の物語を掘り下げ、新鮮で活き活きとした現代にマッチしたバービーを描けると思った」

彼女の大胆な試みは、見事に成功している。特にバービー人形のファンでなくとも、この作品を楽しむことができるのは、グレタ・カーウィグの「バービー」に込めた思いが、鮮烈に映像として表現されているからだと思う。全米で記録的な興行成績を記録しているのも、そのような作品が持つ内容の深さに起因しているのかもしれない。
映画「バービー」は8月11日(金)より全国ロードショーで公開(c)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

映画「バービー」は8月11日(金)より全国ロードショーで公開(c)2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved


連載:シネマ未来鏡
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文=稲垣伸寿

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