先日、30年ぶりの高値を記録した東京株式市場の足を引っ張ることを躊躇しているのだろうか? そうかもしれない。それとも、政局のせいで判断が鈍ったのだろうか?
最後の可能性は検討に値する。岸田文雄首相の支持率は、再び30%台に低下している。岸田が率いる自民党は、1955年以来、わずか2度の短期間の中断を除いて、一貫して政権を担ってきた。経済成長に関して日銀に過度に依存し、また経済が停滞した際には日銀に責任を押し付けるのが、自民党のやり方だ。日銀総裁が本当の意味で自立した行動をとるには、相当の覚悟が必要となる。
こうした経緯を念頭に、経済学者たちは中国が日本から教訓を学んでくれることを切に願っている。一方、日本が、ステロイドを打ち続けることのメリットとデメリットを痛感しているかどうかは定かではない。
2003年から2008年まで日銀総裁を務めた福井俊彦が、もし意思を押し通していたら、今ごろ日本はどうなっていたかを考えてみたくなる。
当時、日本は量的緩和と決別すべき時期に来ていると判断した福井元総裁は、少しずつ慎重に点滴を抜いていった。彼が率いる日銀は2006年と2007年、政策金利を2倍に引き上げることに成功した。だが、政治家と大企業の経営陣はこの断薬を嫌い、拙速で過剰だと批判した。2008年に白川方明が新総裁に就任すると、ゼロ金利政策が復活した。
2013年に日銀総裁に就任した黒田東彦は「異次元の金融緩和」に着手した。黒田らのチームは、膨大な国債や株式を買い入れ、日銀の保有資産は、5兆ドル(約700兆円)規模の日本経済を上回るに至った。
だが、もし福井元総裁の金利正常化の方針が続いていたらと想像してみよう。政治家と経済界は、16年か17年間にわたって、アジア屈指の金融ハブとしての東京の地位を守るため、構造改革や合理化、イノベーションと生産性向上の推進、リスク志向の決断、企業ガバナンスのアップデート、女性のエンパワメント、優秀な外国人材の獲得などを強いられたはずだ。