マネー

2023.08.16 08:00

なぜあなたは日本でビジネスを? 世界のひとに聞いた「お金」のこと

FILE 02 日本語は半年で習得! 早熟の天才が挑む太陽光発電事業

ンブップ アイサトゥ さん セネガル出身

世界には解決不能に思える問題があまりにも多いけれど、絶望するのはまだ早い。アイシャさん(アイサトゥさんのニックネーム)のインタビューを終えた帰途、わたしは興奮していた。アイシャさんのような傑物が世の中を変えるのだ。あぁ、地上には希望がある。

現在、東京農工大の博士課程に籍を置くアイシャさんは、セネガルの首都ダカールの出身。幼いころから頭抜けて優秀だった。小学校で飛び級をしたから同級生はみんな年上で、16歳でバカロレア(高校卒業資格)に受かったのは当時の最年少記録だったとか。「勉強が好きだっただけで……」はにかみながらサラリと言う、「環境を整えてくれた両親のおかげです」。

将来はパイロットになりたくて、高校では数学物理コースに進んだ。

「飛行機の操縦もしたいし、飛行機のエンジンがつくれるエンジニアにもなりたくて。日本は技術の国だと習ったので、日本に留学しました」

留学を考えるセネガル人のほとんどがフランスかアメリカを選ぶ。はるか極東へ旅立つ少女に、周囲は「信じられない」と言ったらしい。生まれて初めて国際線に乗って、成田空港に着いたのは2013年4月、17歳だった。

「飛行機を降りたら、空港内を走っている人がいたんです。何か事件が起きたかと緊張しました。でもその人は、単に急いでいたから走っただけでした。新宿駅に着いたらまたみんなすごく急いでいて。かなりびっくりしました!」

という話にゲラゲラ笑う。アフリカでは急いでいる人なんかいないのだ。街中で走っているのは泥棒くらいで、あとはみな悠然としている。

アイシャさんの非凡さはあらゆるエピソードににじみ出ているのだが、日本語をたった半年で完璧に習得した話には仰天する。一文字も知らない状態で日本語学校に入学し、半年後には日本の新聞をすらすら読んでいたという。

「それまでに習ったウォロフ語、フランス語、英語、アラビア語のどれとも違っていて日本語はほんとに難しかった! でも私、数学物理専門でしたので難しいことに慣れてます、フフフ」

難しいことに慣れている、とはなんてかっこいいセリフだろう。
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文、イラストレーション=金井真紀

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年8月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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