お金を使って何を生むか? 消費を価値に変える循環
山本真人|メルペイ代表取締役CEO新卒でNTTドコモに入社し3年目。仕事をしながら弁理士の資格取得の学校に通った。学校の費用などもろもろ80万円ほど。結婚したばかりの若手社員。決して安い費用ではないし、仕事もしながらの資格取得は容易ではない。かなり思い切って決断したことを覚えている。苦労して学んだ知識だが、実際にそのまま生かした業務をやったことはない。けれども、キャリアを振り返ると、これがいまの自分をかたちづくった重要な「お金の使い道」だった。
NTTドコモでモバイル事業、グーグルでクラウドに携わった。当時はモバイルもクラウドも最先端で、技術によって起きるパラダイムシフトや生活の変化を、そのど真ん中で見ていた。テクノロジーが起こす大転換、革新にワクワクしたのを覚えている。次に大きな変化が起きるのはどこか。そう考えた結果、金融決済の領域にたどり着いた。
新しい事業、特にフィンテックをやっていると、新しい技術やビジネスアイデアを知っているだけでは足りない。法律や関係する規制のなかで、それをどういかすかという意識をもつこと、つまり、弁理士の勉強で学んだことがキャリアの強みになった。
メルカリグループのメルペイとしてチャレンジしていきたいのは、お金をお金でしか返せないという状況を打破すること。モノの売り買いによってお金が生まれ、モノとお金が相互に交換でき循環する世界、それが我々の目指す循環型金融だ。
例えば、メルカリで買って丁寧に使って売ると、ほとんど値段が変わらずに売れることも多い。それを繰り返すと、元手のお金は同じ金額でも、ひとりが使えるお金の総量が増える。
人生100年時代。人々の経験やスキルが豊かになる方向に進んでほしい。常に新しいお金を費やさないと新しい経験やスキルアップができないというのは効率が悪い。我々が目指す循環型金融の仕組みは、お客さまのやりたいことや欲しいもの、経験を加速度的に増やす装置になる可能性がある。いままでお金を使うことはただの消費だったが、それ自体がお金を生む資産となれば、人々の人生はより豊かになると思う。
やまもと・まさと◎2004年、東京大学大学院修士課程修了。NTTドコモ、Google Japan、Square Japanを経てApple JapanでApple Pay加盟店事業統括責任者を務める。18年にメルペイに参画。22年から現職。