中国由来の料理がインドで現地化した「インド中華」の世界を案内してくれたインド・ネパール料理専門家の小林真樹さんによると、「ガチネパ」こと「ガチネパール料理」なるジャンルも都内には存在しており、インド料理ファンの間ではよく知られているという。
「ガチネパ」とは何か。前出の小林さんによれば、日本で一般的に知られるカレーやナン、タンドリーチキンといった従来のインド・ネパール料理ではなく、カトマンズなど現地で実際に食べられているネパール料理のことを指すのだそうだ。
では、「ガチネパ」はどんな場所で食べられるのか。それは日本最大のネパール人街とされる東京都新宿区の大久保だという。そこで小林さんに案内していただき、「ガチネパ」を中心としたインド・ネパール料理店巡りに出かけることになった。
これらの料理があれば「ガチネパ」
ネパール居酒屋「ムスタング タカリ」(新宿区大久保1-9-16 2F)は、2015年10月のオープン時に、ネパールの代表的な家庭料理で、豆スープとご飯と野菜の付け合わせに漬物などをセットにした「ダルバート」を500円という格安で提供(現在は600円)したことで知られる。このように安価に設定されたのは、ネパール人留学生向けのメニューとして提供されたからだという。小林さんは「『ガチネパ』の目安としては、まずダルバートがあるかが基準になる。次いで、チョエラ、スクティ、ブトゥワ、サデコあたりの料理が揃っているかどうかでも判断できる」と話す。
「ガチネパ」とはどんな料理なのか自分の舌で知るため、代表的なガチネパ店と小林さんが推奨するネパール民族料理店「アーガン」(新宿区大久保2-32-3 リスボンビル4F)を訪ねた。
教えてもらった「ガチネパ」料理は、確かにこの店のメニューには存在した。
まずネパールの「スパイス和え料理」というカテゴリーのひとつ、「チョエラ(Choila)」。マトンや豚、チキン、鴨、水牛、大豆などのバージョンがあり、メニューに「辛口Very Hot」と書かれているように、食べると鼻の頭から汗が出るほど辛かった。
そして「干しマトン料理」の「スクティ(Sukuti)」。こちらはビーフジャーキーのように固いマトンをスパイスで野菜と炒めたものだ。これらの料理はネパール焼酎の「アイラ」によく合った。
この店で供していたネパール風餃子である「モモ」をゴマ風味の冷製スープに入れた「スープモモ(Soup Momo)」は、後述のように純粋なネパール固有の料理ではないが、「ガチネパ」の料理に入るという。