マスクはここしばらく、南アフリカの急進左派政党「経済的解放の闘士(EFF)」のジュリアス・マレマ党首が、反アパルトヘイト運動の闘争歌の1つの『キル・ザ・ボーア』の歌詞を引用し「ボーア人を殺せ」と唱えた動画について発言している。マスクは、彼らが白人の虐殺を推進していると主張し、南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領に「なぜ何も言わないのか?」と問いかけた。
マスクはまた「この歌の歌詞は文字どおりに受け取られることを意図していない」という歴史学者の主張を引用したニューヨーク・タイムズ(NYT)の記事について、同紙が大量虐殺の呼びかけを支持していると主張した。
これに対し、自身が黒人であるマレマ党首は「マスクは字が読めないようだ」と非難し、彼を守っているのは白い肌だけだと反発した。
この歌の起源は、1990年代に廃止された南アフリカの人種隔離政策のアパルトヘイトにさかのぼる。マレマ党首は先日、南アフリカ最大の都市ヨハネスブルグに10万人近くが集まった左翼政党のイベントで、この歌の唱和を先導した。
ネルソン・マンデラ大学の歴史学者のノマランガ・ムヒゼは、NYTの取材に、この歌が白人の地主たちに対する暴力を煽るものではなく、アパルトヘイトや差別に反対する人々の結束を高めるためのものだと述べている。
それでも、この歌がしばしば物議を醸してきたことは事実だ。南アフリカの野党の民主同盟の白人党首のジョン・スティーンハイゼンは、この件を国連人権理事会に告発する意向を明らかにし、マレマ党首が暴力を扇動した過去があると主張した。さらに、反アパルトヘイト運動を主導した与党のアフリカ民族会議(ANC)が、対策を講じなかったことを非難した。
南アフリカの平等裁判所は昨年、『キル・ザ・ボーア』の歌がヘイトスピーチや扇動には当たらないとの判決を下した。この歌は言論の自由によって保護されており、歌詞の「撃ち殺せ、ボーア人を殺せ、農民を殺せ」は文字どおりに受け取られることを意図したものではないと裁判所は述べていた。
一方、南アフリカの農業団体Agri SAによると、2017年から2018年にかけての12カ月間に農民の殺害が50件近く報告されたものの、その数は20年ぶりの低水準だったという。また多くの専門家は、農民への暴行が南アフリカにおけるより広範な犯罪問題の一部であり、人種よりもむしろ経済的利益によって動機づけられている場合が多いと主張している。
(forbes.com 原文)