英ロンドンを拠点とするコンサルティング会社キャピタルエコノミクスの最新の報告書は「ドイツの国内総生産(GDP)データは第2四半期の経済停滞を示し、縮小幅は事前予測よりわずかに小さかった。同国経済が9カ月間にわたって縮小していることに変わりはない」としている。単一通貨圏であるユーロ圏の主要経済国の中で、ドイツが最悪の状況だった。フランスは0.5%、スペインは0.4%成長した。
米ニューヨークに拠点を置く金融企業ブラウンブラザーハリマン(BBH)で国際通貨戦略を担当するウィン・シンは、ドイツがユーロ圏で最悪の状況にあったが、フランスとイタリアもそれに続きつつあると指摘し、スペイン経済も遅かれ早かれ不況に陥るだろうとの見解を示した。
ドイツ抜きではEU経済は長期的に成長する見込みがない。ただし、これはドイツ以外の国の経済構造が変わらない限りである。
それにしても、ドイツの状況は悪い。同国は工業品の海外への輸出に大きく依存している。ところが、世界の多くの国々でインフレ調整後の給与が低下していることに加え、エネルギー価格が上昇していることが、同国経済にとって二重の打撃となっている。
ウェブサイト「トレーディングエコノミクス」のデータによると、5月の製造業成長率は2%に落ち込み、直近のピークを記録した昨年9月の5.4%から大きく低下している。他方で、昨年メガワット時当たり700ユーロ(約11万円)でピークに達したエネルギー価格は77ユーロ(約1万2000円)まで下がったものの、新型コロナウイルス流行前の水準を依然として上回っている。
もしドイツ経済が少しでも健全であれば、エネルギー価格の下落が、同国に多数存在する大企業を後押しすると予想できたはずだ。しかし、少なくともまだそうなってはいない。
インフレはまた、他の欧州諸国やその他の地域の消費者が、自動車や洗濯機、冷蔵庫といった消費財を購入するための支出力が低下することを意味する。
また、ドイツが経済を早急に立て直せそうにないことを示す証拠もある。欧州中央銀行(ECB)は、利上げによるインフレ対策への取り組みを間もなく停止する可能性があるとみる専門家もいるのだ。
ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁は先月、利上げの停止については考えていないと述べていた。だが、先述のBBHのシンは「同総裁がそれに言及したということは、ECBが実際に『停止を考えている』ことを示唆している」として、現在の金利の市場価格がそれを裏づけている可能性があると指摘。「信じられないかもしれないが、ECBが米連邦準備制度理事会(FRB)より先に利上げを停止する可能性は十分にあり、それはユーロに悪影響を及ぼすだろう」と述べた。
簡単に言えば、近い将来、為替が大きく動く可能性があるということだ。
(forbes.com 原文)