リーダーシップ

2023.08.09 18:00

僧侶とアクティビスト、その交差点で生きる西村宏堂の挑戦

「私が変えていきたいのは、LGBTQへの偏見です。私は自分がやっている活動と、生き方に意味を持たせています。自分の心とやっていることがピタッと一致していること、本物であることというのがすごく大事で。同性愛者であり、お坊さんの家に生まれた私を、社会の人たちに考えるテーマとしていただきたいのです。例えていうならば、私は目覚まし時計のアラームのような存在。『私のような存在を知ったら、あなたはどう思いますか』と、皆さんが考えるきっかけを作っていきたいのです。

ただ、この二つのアイデンティティは過去にほぼ例がないので、できるだけ教養を身につけて、良きお手本でありたいと考えています。『LGBTQの人って、おねえ言葉で乱暴なこと言うよね』というような固定観念を持つ人もいますが、『LGBTQにも色々な人がいて当たり前』と理解してもらえるように、私の生き方や気持ちを伝えていくことが大切だと思っています」

LGBTQと僧侶、二つのアイデンティティを混ぜることで、私たちが自らの価値観を問い直すきっかけを作る。宏堂氏の話を聞いていると、まるで彼は自分の人生そのものをアート作品として作り上げていっているかのように見える。最後に、今後どのようにして西村宏堂という作品を作り上げていくのか、尋ねてみた。

「5月にパリで開催された、カルティエ ウーマンズ イニシアチブの授賞式に参加させていただきました。その時の、ハリウッド女優でアクティビストでもあるヤラ・シャヒディさんの言葉を、皆さんにもお伝えしたいと思います。ピーターパンの映画でティンカーベル役に抜擢された方なので、ご存知の方も少なくないと思います。

6歳から活躍する彼女は、自分の収入を三つの封筒に分けているといいます。一つ目は自分用、二つ目は貯金用、三つ目は寄付用。彼女の行動は、『豊かさは流れてこそ』つまり、『与え続けなければ享受することはできない』という理念(abundance must flow)を体現しています。私は同性愛者で周りの人から優しくされなかったと感じることが多かったので、ずっと自分のものを他人に与えるのは嫌だと考えてきました。しかし彼女の言葉を聞き、自分が与えられたものを、誰かにバトンとして渡すような人間でありたいと思いました。

彼女は『リーダーシップに年齢は関係ない』というメッセージを残しています。私自身も学び続け、行動し続けたいと強く願っています。今後、人々が安心して自分らしく生きられる環境を、増やしていきたいと思っています」
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