政治

2023.08.07 16:30

核兵器廃絶の理想と現実

Forbes JAPAN編集部
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これに対して、日本労働組合総連合会(連合)は、「『核兵器のない世界』の実現に向けた具体的な道筋が示されず、核兵器による抑止力を事実上肯定したことは残念である」とコメントし、広島県被団協など被爆者7団体は、G7の広島ビジョンは、核抑止体制の維持をうたい期待に程遠いと批判した。 「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」は、広島ビジョンを「リーダーシップの不履行だ」と批判した。

不思議なのは、これらの核廃絶を目的に掲げる団体が、ロシアによる核の威嚇、ベラルーシへの戦術核の持ち込み、北朝鮮による核兵器の開発、中国による核兵器増強の動きに対して一切、言及することなく、G7だけに対して核廃絶の具体的ステップを求めていることだ。ICANのホームページを見ても、ロシアによる核の威嚇や、ベラルーシへの戦術核の配備への批判や懸念は一切書いていない。現状において、核兵器を増やしている国や威嚇に使っている国を非難することなく、G7に具体的道筋を示していないと批判するのは、核廃絶という理想は単なる空想なのか、G7の抑止力を一方的に弱める政治バイアスをもっているかのどちらかだろう。


伊藤隆敏◎コロンビア大学教授・政策研究大学院大学客員教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D取得)。1991年一橋大学教授、2002〜14年東京大学教授。近著に、『Managing Currency Risk』(共著、2019年度・第62回日経・経済図書文化賞受賞)、『The Japanese Economy』(2nd Edition、共著)。

文=伊藤隆敏

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年9月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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