経営者が座右の書とする漫画作品を紹介する連載「社長の偏愛漫画」。自身の人生観や経営哲学に影響を与えた漫画について、第一線で活躍するビジネスリーダーたちが熱く語ります。
第14回目は、アイスタイルの吉松徹郎が登場します。聞き手を務めるのは、漫画を愛してやまないTSUTAYAの名物企画人、栗俣力也。
栗俣力也(以下、栗俣):『capeta』を選んだ理由はなんでしょうか。
吉松徹郎(以下、吉松):作者の曽田正人さんが大好きなんです。『capeta』はレーサーのマンガですが、ただ速いだけじゃ駄目で、チームもお金も環境も、必要なものを全部自分で作って、そして昇り詰めていく。「これはまさしくベンチャーや会社の経営と一緒だな」と思い、薦めさせてもらいました。
栗俣:カペタという存在が天才的ですよね。でもカペタのすごさだけでは上に昇っていけない。F1を目指すなかでも、周囲の人たちが「カペタをどうにかしよう」とする支えによって、どんどんカペタという存在がベンチマーク的に駆け上がっていくところが『capeta』のおもしろいところだと思います。これは起業していくところと重なる。
吉松:そのとおりです。自分1人じゃできない。何よりも周囲のサポートがないとできない。読んでいて印象的なのは、周囲がサポートしようとする覚悟に触れるシーンです。たとえばカートを始めたときにお金がなくて、お父さんも貧乏しながら暮らしていて。「お前、これからレースをやるのか。お父さんができるのはここまでだけど、お前はどうすんだ」と現実を突きつけられて「自分で絶対やるんだ」と決意する。「絶対に上に行ってやるんだ」と覚悟し決心するシーンがたびたび出てくる。まったく気持ちが折れていかないのが、僕にはとても響きます。経営者の人たちと話していても「カペタと似てるな」と思いますね。
栗俣:ご自身もそういう部分があると思われますか。
吉松:好きな言葉を訊かれたら、僕はいつも「折れない心」と書きます。ボクシングでも野球でも政治家でも、折れた瞬間の人ってわかるじゃないですか。自分が「負けない」と思っている限りは負けていない。仮に全てがなくなったとしても、心が折れていなければたぶん大丈夫だと強く感じます。会社も環境もどんどん変わっていくし、シチュエーションも変わる。「一緒にやろう」と言ってくれた人たちの中で、去っていく人もいた。会社の社長は、みんなにフラれていくのも仕事のひとつです。でも自分は絶対に降りない。そういうところはとても似ているなと思います。経営者としてカペタにはすごく学ぶところがあると思いますね。