「素材使い」に感動
スイス時計業界に関するリポートを読むと、「その他の素材」をケースに用いる時計の輸出量が伸びている。セラミックやチタンは機能性に優れており、そこにラグジュアリーな付加価値を加えるのがトレンド。さらにはリサイクルなど、エシカルな視点から素材を選ぶこともできる。いま、素材を語る時代なのだ。AUDEMARS PIGUET|CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ オートマティック
立体的なケース構造をもつ人気コレクションに、ステンレススティールケースのモデルが誕生。しかし八角形のミドルケースを丸形のベゼルと裏ぶたで挟み込む特殊な構造を、硬いステンレススティール素材で実現するのはこれまでのノウハウをもってしても難しく、開発は困難だったという。このスモークベージュ色のモデルは、ミドルケースにセラミックを使用しており、立体的な美しさをさらに強めた。またダイヤルの装飾も繊細で、成熟度を増している。
PANERAI|ラジオミール カリフォルニア
パネライの時計の原点となる「ラジオミール」に注力。これは再生スティールを使用するエコ素材eSteelをケースに使用し、その表面にヴィンテージ加工をすることで、使い込んだ道具のように見せる。アラビア数字とローマ数字のインデックスをミックスするカリフォルニアダイヤルも、初期デザインを再現したもの。
CHANEL|J12 サイバネティック
2000年のデビューから一貫して、デザインコードを守り続けてきた「J12」は、素材の可能性を広げることで、独創的な表現を引き出している。新作はブラックセラミックとホワイトセラミックを組み合わせて、ピクセル模様を表現。デジタルとリアルのはざまを漂う、摩訶不思議な時計である。
HUBLOT|クラシック・フュージョン クロノグラフ オーリンスキー チタニウム
現代美術家リチャード・オーリンスキーとのコラボレーションモデルで、彼の作風である多面構造を、ケースに取り入れたクロノグラフ。これまではチタン素材に対して丁寧にポリッシュ仕上げを施していたが、今年はマットな質感のマイクロブラスト加工にした。その結果、より陰影が強まり、迫力が増している。
ROGER DUBUIS|エクスカリバー モノバランシエ チタン
星形のアストラルスケルトンやマイクロローターなど、高度な技術と創造的な審美性をもつロジェ・デュブイの旗艦コレクションにチタンモデルが登場。マット仕上げとポリッシュ仕上げを使い分けて立体感を強め、グレーメタリックの色調で存在感を引き出す。金属アレルギーの心配がなく、軽くて着用感に優れるのもうれしい。CHOPARD|L.U.C 1860
エシカルな再生素材でありながら、医療用スティールに匹敵する品質をもち、しかも硬度が高くてポリッシュ仕上げが美しいルーセントスティールを使用。華やかなサーモンピンクのダイヤルは、ガルバニック加工によるもの。自社製ムーブメントCal.L.U.C96.40-Lの仕上げも素晴らしい。
GLASHÜTTE ORIGINAL|パノインバース・リミテッド・エディション
時刻表示をオフセンターにして、そのスペースに調速脱進機をおさめることで生じた広いムーブメントの地板部分に、レーザーエングレービングで、ビルが立ち並ぶ大都市の姿をグラフィカルに表現した。通常ならストライプなど伝統的な仕上げを施す場所をキャンバスに見立てるという遊び心に感服。