α-gal(アルファ・ガル)症候群は、マダニにかまれることによって引き起こされるアレルギー症状だ。α-gal(ガラクトース-α-1,3-ガラクトース)は、マダニの唾液に存在するほか、赤肉や牛乳製品にも含まれる炭水化物の一種。体がこれに過剰反応し、じんましんや吐き気といった軽い症状や、極端なケースではアナフィラキシーのような重度の症状が出る。
CDCの研究結果によると、米国では2017年から2021年にかけ、α-gal症候群が疑われた症例は9万件を超え、毎年およそ1万5000件のペースで増加した。2010年以降に発症した患者の数は9万6000人から最大45万人にのぼる可能性があるという。
CDCが発表した2本の論文のうち1本の筆頭著者は、α-gal症候群は新たに出現しつつある重大な公衆衛生問題であり、「患者によっては一生涯続く」可能性があると述べている。
ただしメイヨー・クリニックによれば、症状は時とともに緩和もしくは消滅する可能性がある。マダニに再びかまれなければ、人によっては1~2年後には、また赤肉などを食べられるようになるという。
CDCは、α-gal症候群に関する医療従事者の知識と、全米における疑い症例の数を調べた。疑い症例の多くは、南部のオクラホマ、カンザス、ミズーリから、東部のノースカロライナやバージニアの各州にかけた地域で報告された。
調査対象になった1500人の医療従事者のうち、「α-gal症候群について耳にしたことが一度もない」と回答した人の割合は42%に上った。また、診断方法を知っている人は3分の1に満たなかった。
α-gal症候群の治療法や治療薬は現時点では存在しない。連邦政府の諮問委員会は、α-gal症候群の治療法に関する研究を強化するよう求めている。米厚生省によれば、今のところ、米食品医薬品局(FDA)の承認を受けていない試験的な治療法が取られている。