北米

2023.08.04 15:30

中国などの農地購入を制限する法案を米上院が可決した背景

Getty Images

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米上院は7月25日、中国、ロシア、北朝鮮、イランとつながりのある者による米国農地の購入を制限する法案を91対7の圧倒的賛成多数で可決した。

この法案は、敵対する国々と関連した米国内での事業活動を厳しく制限しようとする超党派の取り組みの一環だ。こうした取り組みは、中国が偵察目的で米国本土に送り込んだと懸念された気球をめぐる騒動や、最近になって浮上した、中国の企業や実業家による米軍基地周辺の土地購入の動きを受けたものだ。

今回提案された法案は、国防予算の大枠を決める国防権限法(NDAA)の修正案の一部として上院で可決されたもので、大統領に対して、冒頭に挙げた4カ国による農地取引の審査を義務付け、これら4カ国に本拠を持つ外国企業体に対して、米国農地の「管轄権」を与えるような土地取引を差し止める(ただし、米国の安全保障との関連で、差し止めを免除する場合もある)という内容だ。

今回の修正案に定められた措置は、対米外国投資委員会(CFIUS)に対して、農務省から得られたデータを用いて土地取引を審査する権限を与え、必要と判断された場合には取引を差し止め措置も認めるものだ(CIFUSは現時点でも、外国主体によるその他の取引について審査を行っている)。

今回の修正案は、共和党議員8人と民主党議員2人からなる超党派グループによって提出された。採決の際には、民主党で5人、共和党で2人の議員が「反対」票を投じた。

上院では同日、別の修正案も、91対6の圧倒的多数で可決された。こちらは、人工知能(AI)や半導体、衛星通信、量子コンピューティングなどのハイテクセクターに関して、米国企業が中国、ロシア、北朝鮮、イランでおこなう投資について監視を強化するという修正案だった。

今後の焦点は、この修正案が下院で可決・成立するか否かだ。国防権限法案は、今回の修正案が盛り込まれる前の7月14日の時点で、下院を僅差で通過している。だが、共和党が多数派を占める下院で可決された法案には、人工妊娠中絶やトランスジェンダーへの配慮など、全米を二分する議論を呼んでいる問題について、保守派の意見を反映させた施策が多数盛り込まれている。そのため、民主党が多数派を占める上院でそのままのかたちで可決されるとは考えにくい。
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翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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