現在70歳のコーエンは、家族が経営する食料品流通業C&Sホールセール・グロッサリーを、売上高330億ドルの大手に育て上げたが、彼の富の多くは倉庫の自動化ソリューションからもたらされた。株価の急騰により、シンボティックの時価総額は350億ドルに膨らんだ。
フォーブスが最初にコーエンを取り上げたのは 2021年12月の「ウォルマートの倉庫を改革するビリオネア」と題した記事だった。マサチューセッツ州ウィルミントンを拠点とするシンボティックは、ウォルマートと契約を結んだ後の2022年にソフトバンク出資の特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じて株式を上場した。
同社はウォルマートに加え、アルバートソンズやターゲットらを顧客としている。
今回のシンボティックの株価の急騰の原動力となったのは、31日に発表した第3四半期決算だ。売上高は前年同期の1億7600万ドルから78%増加し、3億1200万ドルに達した。同社は、第4四半期に2億9000万ドルから3億1000万ドルの売上を見込んでおり、年間売上は初めて10億ドルを超える見通しだと発表した。第3四半期の損益は、自動倉庫の展開のための支出で3900万ドルの損失だったが、第4四半期には初めての黒字を見込んでいる。
ソフトバンクと合弁会社を設立
シンボティックはまた、24日に、ソフトバンクグループと「グリーンボックス・システムズ」という合弁会社を設立し、人工知能(AI)を活用したロボット倉庫を中小企業向けにレンタルモデルで展開すると発表した。両社は、このプロジェクトに合計1億ドルを投じ、ソフトバンクはグリーンボックスの約65%を、残りはシンボティックが所有することになる。この事業は2024年に始動し、6年後にすべてが稼動すれば、年間5億ドル以上の経常収益が見込めるとシンボティックは述べている。
シンボティックのトム・アーネストCFOは、決算発表でシンボティックとグリーンボックスの両社の受注残高が合計230億ドルに上ると述べた。第3四半期末時点で、同社は10カ所の倉庫を運営中で、さらに33カ所を建設中という。
シンボティックの大規模な倉庫では400以上の自律型ロボットが、狭い通路を行き来している。「巨大なテトリスのようなオペレーションだ」とコーエンは2021年にフォーブスに語っていた。
市場が低迷し、SPAC上場が輝きを失った2022年に会社を上場させたコーエンは、長期的な視野に立っていた。「市場は市場だ」と彼はフォーブスに語っていた。「大事なのは3年後、4年後、5年後を考えることだ。そこに本当の価値がある」
今日の状況を見る限り、彼の賭けは正しかったようだ。
(forbes.com 原文)