彼らが売るのはヘアスタイリングではなく、スタイリストだ。ソーラ・サロンズは広々とした店舗を借り上げ、それを小さな区画に分割する。そして、彼らは地元で多数の固定客を持つトップクラスのスタイリストらを採用する。スタイリストたちはソーラ・サロンズに賃料を支払い、自らがオーナーとしてサロン経営をするのだ。
これが、ストラットン・スミスとマット・ブライガーが選んだソーラ・サロンズのビジネスモデルだ。現在はアメリカ中に広まっている。共同創業者の2人は過去にモバイルホーム向けの駐車場ビジネスを手がける企業ARC 社を創立し、2004年にIPOを果たしている。スミスはその以前は、ミズーリ州のヘアサロンのフランチャイズオーナーをやっていた。しかし、スタイリスト同士の人間関係を良好に保つのに疲れ、この事業からは撤退していた。
ソーラ・サロンズは現在、全米240カ所に店舗を持つまでに至った。編集部は創業者の2名にインタビューを行った。
共同創業者のストラットン・スミス(左)とマット・ブライガー(右)
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――どういった経緯でサロンビジネスに戻ることになったのですか?
友人の一人から「サロン・スイーツ(共同サロン)」という新しいビジネスモデルについて教わったことです。私たちはその実態を確かめるためにオマハに飛びました。そこで見たのは、多くの幸せそうなプロのスタイリストたちの姿でした。このビジネスモデルを発展させれば、新しい形のサロンが運営できる。スタイリストらに最高の職場を提供しようと思いました。
――最初から順調に進みましたか?
まず、2003年にコロラド州のデンバーの3店舗から始めました。すると、私たちが成功しているのを見て、友人や前の同僚らが「自分も参加したい」と言い出して、30名のフランチャイズオーナーらで100カ所の店舗を出しました。その後、資金調達を行い、2012年にはフランチャイズ開発チームを発足。2年間で新たに、80名のオーナーを増やしました。
――ソーラ・サロンズにとって最も重要な顧客は?
それはヘアスタイリストたちです。私たちは業界の常識の逆を行っています。サロンで働くプロのスタイリストたちが私たちの顧客なんですからね。このビジネスモデルはコワーーキングスペースの運営と似ているとも言われます。
ただし、私たちの場合は業界を絞ってそれをやっている。だからこそ、経験も積めますし、よりよい製品やサービスを提供することができるのです。フランチャイズのオーナーたちにも言っていますが、スタイリストらと契約したら、不動産業者だという意識は捨て、顧客サービスに意識を集中させるようにしています。
ヘアスタイリストのスタジオのソラサロンスイートのインテリア。
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――新しいフランチャイズを成功させる秘訣は?
私たちは一般的なフランチャイズビジネスよりも大きな資本を必要とします。一度選んだロケーションは簡単には動かせません。だから、慎重にロケーションを選ぶことを最重要視しています。なるべくサロンが密集している地域で店を開き、その地域でトップ15~20%に位置するキャリア志向のスタイリストたちをスカウトするんです。
――どのようなスタイリストがソーラ・サロンズで成功するのでしょうか?
経験豊富でより高いレベルに到達したいと思っている人たちです。25%のスタイリストは、伝統的なサロンオーナー経験者です。彼らは美容学校で、「将来は自分の店を開くように」と教師たちに教えられていますが、競合環境が厳しく、多くのサロンは店の半分しか客で埋められていません。彼らはスタイリストとして優秀でも、ビジネスオーナーとしての能力を備えていません。
だから、私たちは彼らにステップアップする方法を教えます。従業員を抱えずにビジネスのオーナーになれる。私たちのコンセプトに賛同すれば、大抵の場合、彼らの給料は50~100%アップします。美容製品を売ってその利益を手にすることもできます。
――このビジネスモデルはサロン運営のリスクを最小限にすると思いますか?
スタイリストたちは、すでにある程度の常連客を持っているのでリスクは軽減されます。彼らには創業マニュアルなどの商売を軌道に乗せるツールを提供し、サロンの免許や小売販売許可を取るために必要なステップも学ばせます。ソーラ・サロンズの離職率は年間でたったの10%です。これは他の大手のサロンと比較すると、驚異的に低い数字です。
――スタイリストが他へ逃げないために、どのような補助や手当を提供していますか?
一番はコミュニティーです。彼らはサロンの個人経営者でありながら、総勢5,000人ものコミュニティーの一員でもあるのです。また、オンラインでのスケジューリングや、ソーシャルメディアの活用法なども学ばせています。
――次の目標は何ですか?
全米1,000店舗を達成することです。私たちはニューヨークやサンフランシスコなどの都市部で成功を収めてきました。そして今はネブラスカの田舎町にまで手を広げています。このビジネスモデルはどの都市でも通用します。しかし、不動産契約は慎重に行う必要があります。例えば、テキサスのワンルームマンションの相場は1週間195ドルほどですが、ニューヨークでは1週間550ドルもします。