新戦略はさらに「アジア諸国およびそれ以外の国々との(ドイツの)経済関係を拡大する」ことを目指している。中国を特に苛立たせているのは、台湾を重んじる立場をとっていることだろう。ドイツは台湾との関係改善を約束し、台湾の国際機関への参加を支持し、中国本土との統一は平和的に「相互の同意」のもとに行われると主張している。また、米国同様に、世界貿易機関(WTO)における「発展途上国」の地位を放棄するよう中国に圧力をかけるとしている。
ドイツは、米国で一般的になっている中国貿易からの「デカップリング(切り離し)」についての言及を慎重に避けている。ドイツは「デリスキング(リスク軽減)」という表現を好む。中国との貿易関係を維持しつつも、依存や中国の圧力、不公正な貿易慣行からの保護を確保することを意味する。新戦略が2国の経済を断絶させようとしていなくても、サプライチェーンを中国から分散させることをドイツ企業に強く推奨している。ドイツ政府がそうした分散化を義務づけるかと尋ねられたショルツ首相は、政府の圧力なしにドイツ企業はすでに中国からの分散を進めているため、義務化は必要ないだろうとの見方を示した。米国や日本の企業も同様の動きをとっている。
当然のことながら、中国はドイツの新戦略を快く思っていない。ここしばらく米国と日本が中国の不公正で時には搾取的な貿易慣行に抵抗している間、欧州各国、特にドイツは米国と日本が距離を置く中で中国に対して優位に立とうと躍起になっているようだった。
ショルツ首相は数カ月前にドイツ企業幹部を伴って訪中したばかりで、つい数週間前には中国のリー・チャン(李強)首相が中国と欧州連合(EU)との密接なつながり、特にドイツとの「強固な関係」を強調したばかりだ。中国はこうした欧州の姿勢を、米国や日本の敵意からの一種の保護と考えたに違いない。直近のG7サミットでは中国への依存を抑制することで合意し、そして今回のドイツの戦略によってその防御線は消えた。今のところ、世界は中国からの反撃をほぼ受けていないが、すべては今からだろう。
(forbes.com 原文)