健康に関わる新興テクノロジー
メンタルヘルスのためのメタバース
メタバースをめぐっては誇大な宣伝が行われていますが、このコンセプトが現実になるにはまだ長い道のりがあります。とはいえ、バーチャルな世界は共通のデジタル空間をつくり出し、その空間で人々が社会的、職業的に交流することを可能にします。バーチャル環境は、予防、診断、治療、教育、研究など、遠隔医療の適用を広範にカバーし、メンタルヘルス治療を提供する新たな機会をもたらします。
例えば、うつ病や不安症などの症状を抱える人の支援や、マインドフルネスや瞑想の促進を目的としたゲームプラットフォームもいくつか構築されています。
デザイナー・ファージ
ヒト、動物、植物のマイクロバイオームには、それぞれの生物体の健康に不可欠なおびただしい数の細菌群集が存在します。最近のバイオエンジニアリングの進歩により、科学者がマイクロバイオームを設計し、ヒトや動物のウェルビーイング(幸福)を高めたり、農業生産性を向上させたりできるようになっています。
レポートによれば、ファージは遺伝情報に基づいて特定の種類の細菌を識別し、感染させるウイルスです。このファージを中心にテクノロジーの開発が行われています。バイオエンジニアはファージの遺伝情報を再プログラムすることで、遺伝的指令が細菌に伝達され、違った作用の仕方をするようにできます。これによりマイクロバイオームが関連している病気を標的にし、治療できるようになります。
空間オミックス
人体は約37兆2000億個の細胞の集合体であり、これらの細胞が一緒になって機能しています。このような微生物学的プロセスの仕組みを理解するために、科学者たちは空間オミックスと呼ばれる手法を開発しましました。空間オミックスは、高度なイメージング技術と複雑なDNAシーケンスのプロセスを組み合わせて、生物学的プロセスを分子レベルでマッピングすることのできる手法です。同レポートによれば、科学者が空間オミックスを利用することで、従来は観察できなかった細胞構造や生物学的プロセスの複雑な細部まで調べることができます。
エンジニアリング
フレキシブル・バッテリー
電子機器の可撓性が向上するにつれて、これらに電力を供給するバッテリーにも曲げやすいタイプのものが登場しています。フレキシブル・バッテリーの製造に使用する軽量素材は、ねじったり、伸ばしたり、曲げて形をつくったり、炭素繊維や布のような炭素系の素材にコーティングしたりすることもできます。同レポートによれば、充電可能で曲げられるこのバッテリーは、巻き上げ式のコンピュータースクリーン、スマート衣料やウェアラブルエレクトロニクス、例えばヘルスケア機器や生体センサーなどの成長市場を一段と活性化させています。
フレキシブル・ニューラル・エレクトロニクス
ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)は、脳と外部コンピューターとの直接通信を可能にします。これまで、このテクノロジーはリジッド・エレクトロニクスをベースにしており、脳組織との機械的・幾何学的な不一致によって制限されてきました。しかし、フレキシブル・エレクトロニクスや、生体適合性がより高い素材が飛躍的進歩を遂げれば、患者にとって侵襲的体験が減ることになります。BMIタイプのテクノロジーはすでに、てんかん患者や、電極で神経系と接続する義肢を使用している患者の治療に使われています。
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(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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