経営・戦略

2023.08.08 17:00

メロディ・ホブソンが練るお金と「新しい希望」のプロジェクト

メロディ・ホブソン アリエル・インベストメンツ社長兼共同CEO、スターバックス会長

心の障壁がリセットされた

ホブソンの人生の共通パターンはこうだ。一流の友人や仕事仲間が彼女に驚き、別の人物に紹介し、それが繰り返される。彼女はルーカスを通じてF1王者のサー・ルイス・ハミルトンと出会った。テニス選手のセリーナ・ウィリアムズは、共通の友人である歌手のアリシア・キーズを通じホブソンと知り合った。ホブソンにとって、アリエル創業者であるロジャースとの結びつきほど重要な関係はない。
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65歳のロジャースは別世界で生まれ育った人物だ。父は米軍初のアフリカ系航空部隊の一員で判事、母はシカゴ大学ロースクールを卒業した初の黒人女性。ロジャースは大学のバスケットボールチームでキャプテンを務めた。チームにはミシェル・オバマの兄、クレイグ・ロビンソンが1年生として所属しており、ロジャースは後にオバマ大統領の就任式で実行委員長を務めた。

大学2年生になったホブソンが帰省した際、ロジャースは彼女を自分の母の高層アパートメントに招いた。「(ロジャースと母は)こんな素敵な住まいにいるのが当たり前の様子で、しかも黒人。見たこともない光景でした」とホブソンは話す。「その時(心の)障壁がリセットされたのです」

次の夏、アリエルでインターンをしたホブソンは野心を隠さなかった。毎週土曜日、ロジャースはマクドナルドに行き、バター付きビスケット2つとダイエットコークを注文し、山積みの新聞を読む。そこにホブソンも現れ、同じ新聞の束を同じ順番で読む。「私がどこに行くときも、彼女はその車に飛び乗る気でいっぱいでした」とロジャースは話す。彼はホブソンがティー・ロウ・プライスのインターン資格を得られるよう手助けした。1991年、ホブソンはウォール街の大企業の面接を受けた。しかし、入社したのはちっぽけだったアリエルだ。巨大組織の小さな歯車になるより、意思決定の行われる現場でキャリアを始めようとしたのだ。
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ロジャースはアリエルの株式選定と投資を指揮し、ホブソンはその他の万事を監督する。彼女は2019年に共同CEOとなり、ロジャースの持ち株の14%を買い取った。彼女は持ち株比率39.5%で同社最大の株主となった。その価値はフォーブスの試算で1億ドル相当だ。

08年の世界経済危機では、アリエルの資産は04年の210億ドルから33億ドルに暴落し、従業員100人のうち18人をレイオフせざるをえなくなった。ホブソンとロジャースは友人でメンターの投資家、マリオ・ガベリを訪ね助言を求めた。彼は「シートベルトを締めたままでいなさい」と伝えたという。「エクイティ・パートナーを探さないこと。事業をもち続け、全速力で進みなさい」。ふたりは彼に礼状を送った。アリエルのファンドが09年に回復すると、ガベリはその礼状を額縁に入れ送り返した。枠に「私の言った通り」と大書きして。
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文=マネト・アフジャ、ハンク・タッカー 写真=ジャメル・トッピン 翻訳・編集=坪子理美

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