経営・戦略

2023.08.08 17:00

メロディ・ホブソンが練るお金と「新しい希望」のプロジェクト

メロディ・ホブソン アリエル・インベストメンツ社長兼共同CEO、スターバックス会長

現在54歳のホブソンが唯一無二のキャリアを通じて達成してきたことは皆、努力、分析、ネットワーキングの上に築かれている。ジョージ・フロイド殺害事件の後、ホブソンは毎週日曜日に一流の黒人経営者らとZoom会議を開きブレインストーミングを行った。資本家が富の格差を狭め、かつ利益を生み出す方法について。会議の常連で、アリエル関連会社のCEOとしてプロジェクト・ブラックの運営を担うレスリー・A・ブランは語る。「米国政府の定義では、マイノリティ経営の事業は小さく、不利を被っているものとされています。しかし、私たちは大きく、有利な存在になりたいのです」
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黒人の経営する投資会社として米国最長の歴史をもつアリエル・インベストメンツ(1983年創業)は、忍耐強い逆張り型のバイ・アンド・ホールド戦略で知られ、社内には亀のモチーフが飾られる。ただ、同社でのホブソンの躍進は遅さとは正反対だ。創業者のジョン・W・ロジャース・ジュニアは、彼女の高校卒業前からすでにその有望さに目をつけていた。

ホブソンはハーバード大学とプリンストン大学に合格し、ハーバードに心を決めていた。それが変わったのは、ロジャースが地元シカゴで主催したプリンストンの新入生勧誘ディナーでのことだ。ベンチャーキャピタリストのリチャード・ミスナーが隣に座り、彼女の大学選択と人生の両方を変えると宣言した。ミスナーは彼女に毎日電話し、同窓生である当時の米国上院議員、元NBAスターのビル・ブラッドリーに引き合わせた。「彼女が現在の立ち位置にいるのは、高校卒業前からもっていた価値観と自己統制力、そして前向きなエネルギーレベルゆえです」とブラッドリーは言う。

2000年にブラッドリーが民主党の大統領候補予備選挙に出馬した時、ホブソンは資金調達係として働き、同じく支援者であるスターバックスのハワード・シュルツに感銘を与えた。ホブソンは05年にスターバックス経営陣に加わり、21年に非常勤会長に就任して、S&P500構成企業の役員を率いる唯一の黒人女性となった。「メロディは偉そうな態度などとりません。アルバイトのバリスタといるときも、どんな要人といるときも同じようにくつろいでいるのです」とシュルツは語る。
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シュルツはホブソンをドリームワークス・アニメーションCEOのジェフリー・カッツェンバーグに紹介した。今度は彼がホブソンを誘う番だった。12年に彼女はドリームワークス会長となり、16年の同社の売却時には、値切りの厳しさで知られるコムキャストCEOのブライアン・ロバーツ相手に38億ドルの価格(売却話が公になる前の株式総額より50%高い)を引き出した。「彼女はそれまで会社を売買したことなどなかったのに、生涯そんな取引をしてきたかのような交渉ぶりでした」とカッツェンバーグは驚嘆する。

映画界とのこのつながりが、彼女が『スター・ウォーズ』製作者のジョージ・ルーカスと会議で出会った時に話の種となったのだろう。ふたりは初デートで教育へのアクセス推進について語り合った。13年にふたりが結婚した際は、花嫁のエスコート役をブラッドリーが務めた。
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文=マネト・アフジャ、ハンク・タッカー 写真=ジャメル・トッピン 翻訳・編集=坪子理美

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