リーダーシップ

2023.08.11 11:00

大谷翔平選手に見る「軽やかなリーダーシップ」の形

3. コミュニケーション力

二刀流として自身の準備とコンディション調整だけでも想像を絶する難しさがあったはずだ。そんな中、大会を通して常に動き回ってはチームメイトたちに声をかけて励ます気遣いがカメラに幾度となく収まっていた。

中でも、14打席無安打に苦しんでいた日本の主砲、村上宗隆選手には、凡打でも「進塁打は大事だよ」と頻繁に声をかけ続けた。

そしてここぞという時には激しく、力強くチームメイトを鼓舞する。終始劣勢の5−4で迎えた準決勝の9回、ベンチは敗戦ムードに包まれつつあった。その中にあって大谷選手は余裕の笑顔で「行くぞー、準備してー」と大手を広げて叫びながらベンチ内を歩き回り、チームを鼓舞し続けた。そして先頭打者として二塁打を放った大谷選手は、「ヒット打ってくるね」と言ってベンチを出たと聞く。有言実行後には、塁上で何度も大手を振り上げて「カモン、カモン」とベンチに諦めない姿勢を訴え続けた。これがチームメイトの闘争心に火をつけ、劇的なさよなら勝利へとつながったのだ。
Getty Images

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4. 愛嬌

練習中にはカメラマンに代わってチームメートを撮影したり、緊張気味の選手にちょっかいを出して力みを解すひょうきんな面も多く見られた。 

二刀流の証である泥だらけのユニフォームで最終回のマウンドに上がった史上初のクローザー。日本国民の願いを一身に背負い、強敵をねじ伏せた強心臓と入念な準備。何度見てもあのシーンには胸が熱くなる。

最後の打者トラウトを三振に討ち取った後、歓喜の輪の中心でグローブを高々と放り投げた大谷選手。胴上げの後にふと「俺のグローブは?」とキョロキョロする大谷選手の姿が、映画のエンドロール後のおまけに映し出された。まるで自分の物を無くして困っている幼稚園生のようなトッププレイヤーの愛らしすぎる姿に、観客から一挙に笑いが噴出した。

力強くたおやかでかわいい。ハイエンド・ジャパニーズが見せてくれるであろう新しいリーダーシップの形に、この先も注目していきたい。

文=山田理絵

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