このファンドを率いるのは、シンガポールを拠点とするグーグルのスタートアップ支援機関「Google for Startups」のアジア太平洋地域責任者のマイク・キムだ。「このファンドによって創業者はグローバルなプラットフォームに立ち、世界中のVCから追加資金を得ることができる」と彼は述べている。
グーグルは、2020年にGoogle for Startups Founders Fundsと呼ばれる創業者支援のプログラムを立ち上げたが、その目的をキムは「すべての創業者の競争条件を公平にするためだ」と述べている。グーグルは、アジアでは特に女性の創業者に注目しているが、他の地域では黒人やラテンアメリカ系の創業者を支援するファンドを運営している。
今回のアジアの女性創業者向けのファンドは、立ち上げ当初は、人工知能(AI)分野のスタートアップに焦点を当てる予定という。AIが急速に進歩する中で、キムは人種マイノリティや女性が開発プロセスに参加することが重要だと述べている。
バイアスを持つAIが、女性への融資を拒否するなどの事例が報告されている。「AIシステムは、データとアルゴリズムに入力される情報で構築される。男性が支配的な業界であれば、データは歪んでしまう」とキムは語る。
グーグルのGoogle for Startupsは、以前からアジアの女性創業者のスタートアップを支援してきた。そのうちの1社が、ソウルに拠点を置く「AI For Pet」で、設立4年目の同社はスマホのカメラとAIアルゴリズムを使って、猫や犬の目や皮膚の病気を検出するアプリを運営している。
一方、2022年1月にGoogle for Startupsの参加企業に選ばれた日本のラトナは、AIを活用してプロセスの自動化とデジタル化を支援するハードウェアとソフトウェアを提供している。2020年にホテルや旅館のチェックインプロセスをデジタル化するAI搭載アプリ「OMOTE-Bako」を発表した同社は、2021年にソフトバンクとスパークスグループから約1000万ドル(約14億円)を調達した。
ラトナのCEOの大田和響子は、アクセンチュアと楽天を経て2018年に同社を共同創業した。
Women Founders Fundの支援を受けるスタートアップは、エクイティ・フリー(株式交換を伴わない取引)で10万ドルの資金を獲得し、ビジネス戦略のアドバイスを受けられる。キムは、スタートアップの成長を支援することで、TensorFlowやGoogle Cloudのようなグーグルのプロダクトの利用拡大につなげたいと考えている。
(forbes.com 原文)