潘は、中国政府の強い統制下にある同国の金融システムにおいて数々の役職を歴任してきた。公式の経歴によると、彼はハーバード大学のシニアリサーチフェローを務め、ケンブリッジ大学ではポスドクとして研究を行っていたというが、詳細な時期は記載されていない。
潘の総裁就任発表と同日に、中国外務省は同国で最も著名な外交官の1人に関する謎めいた人事異動を発表した。外相を長く務め、現在は共産党で外交政策を統括する王毅が、1カ月間表舞台から姿を消している秦剛に代わって外相に復帰したのだ。交代の理由に関する説明はなかった。
外務省の高官を長年務めた秦は、昨年、外相に就任する前は駐米大使を務め、習近平国家主席に近いとされる。テスラCEO(最高経営責任者)でビリオネアのイーロン・マスクは、5月に訪中した際に北京で秦と会談している。
潘は最近、中国人民銀行の党委員会書記にも就任した。彼は、2012年に人民銀行の副総裁に就任している。それ以前は中国農業銀行の副総裁を務めたほか、中国工商銀行でさまざまなポストを歴任した。これら2つの国営銀行は海外での知名度こそ低いが、先月フォーブスが発表した世界のトップ公開企業2000社ランキングの「グローバル2000」でいずれもトップ10にランクインしている。
潘は、中国人民大学で経済学博士号を取得している。人民銀行総裁を退任する易綱は、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で経済学博士号を取得後、インディアナ大経済学部で教職に就いた経歴を持っていた。
中国経済の先行きに対する懸念や、地政学的な緊張の高まりを受け、海外からの対中投資は減少し、サプライチェーンの多様化を求めた中国離れの動きも加速している。「多国籍企業が海外調達の100%を中国に依存する時代は終わった」と、モルガン・スタンレーで長年アジア地域を担当したスティーブン・ローチは述べている。
「中国はオフショアリング先として引き続き魅力があり、米国本拠の企業を含む多国籍企業にとっては開拓する余地が大きい市場だ。しかし、中国にすべてを賭けるのではなく、リスクを分散するのが望ましい」とローチは話す。彼は、30年に渡ってモルガン・スタンレーでチーフエコノミストとアジア部門の会長を務めた経歴を持つ。在中国EU商工会議所は、先月発表した「2023年版在中国欧州企業景況感調査」の中で「企業マインドは大幅に悪化している」と記していた。
2023年上半期の中国のGDP成長率は5.5%だったが、これはコロナ禍で支出が大幅に落ち込んだ前年の反動だと言える。
(forbes.com 原文)