異性愛者を自認する人が同性の相手と公の場で愛情表現をする行為は「同性パフォーマティビティ(SSP)」と呼ばれる。論文によると、米国では異性愛者を自認する女子大生の20~33%にこうした行為の経験があるという調査結果もあり、大学に通う女性の間では比較的一般的であることが示されている。
論文の主著者で、研究機関エクイティ・アクセラレーター(Equity Accelerator)の研究者であるサマンサ・スティーブンスは「メディアと大衆文化では、女子大生の間のこうした性行動がフェティッシュとして扱われたり軽視されたりすることが多いが、これは一般に思われているよりも複雑。この現象とそれを行う女性について、過度な一般化や単純化を避けることが重要だ」と述べている。
研究チームは、同性パフォーマティビティの経験がある異性愛者の女性282人を対象に、オンライン調査を実施。自身のアイデンティティや姿勢、動機、経験について聞いた。その結果を基に、潜在クラス分析と呼ばれる統計手法を用い、同性パフォーマティビティの動機を以下の3つに分類した。
1.他者に関わる動機:男性の気を引くためや他者との絆を深めるといった動機を持ったグループ
2.性的な動機:性的な欲求や探求といった動機を持ったグループ
3.あいまいな動機:特にこれといった動機がなかったグループで、これに属する女性が一番多かった
興味深いことに、3グループすべてで同性パフォーマティビティの動機として、アルコールで酔っ払って楽しむことが一定の動機となっていた。こうした行為がパーティーの場でよく起きることを改めて示す結果だ。
「あいまいな動機」グループの女性は、他のグループと比べて自身の経験をネガティブに捉える傾向にあり、将来また同性パフォーマティビティをしたいという欲求が低かった。
一方「他者に関わる動機」を持つ女性は、自身の経験について、女性を「モノ扱い」するものだと捉える傾向が強かったものの、それを必ずしもネガティブなものとはみなしていなかった。
「性的な動機」のグループは、同性に性的な興味を持っている割合が最も高く、これが同性パフォーマティビティの動機となっていた。
自己評価や女性らしさ、特権意識、政治的な保守主義といったアイデンティティの側面については、3グループで大きな違いはみられなかったが、唯一「他者に関わる動機」を持つ女性では「ソロリティ」と呼ばれる女子学生の社交クラブに所属したいという意識が強かった。
また、同性愛差別的な姿勢をめぐるグループ間の違いがなかったことから、同性パフォーマティビティに参加する理由は、バイセクシュアル(両性愛者)の人々に対する偏見や、性的マイノリティの女性に対する不快感とは関係していないことが示された。
スティーブンスは、女性の同性パフォーマティビティの動機や経験はさまざまであると認識することが重要であり、ステレオタイプ化や単純化は有害なものとなる可能性があると指摘。同性とのこうした経験は、発達過程の中で一般的に起きるものであり、同性パフォーマティビティは自身の性を楽に探求する方法となり得ると述べている。
(forbes.com 原文)