さまざまな地政学的問題をめぐって米中間の緊張が高まるなか、下院軍事委員会のメンバーである民主党の進歩派議員と、中国に批判的な保守派の共和党員の両方が、米国の国内武器製造能力について疑問を投げかけた。
ドナルド・トランプ政権下で米国通商代表を務めたロバート・ライトハイザーは、新著『No Trade Is Free(いかなる貿易も自由ではない)』の中で、次のように警告した。「米国は、自国で軍需品を製造する能力をもたなければならない。これにはハイテク軍事装備も含まれる。自国の軍事装備を国内で製造できない国は、有事の際に、装備の供給を妨害されるリスクを負う」
フィナンシャル・タイムズが6月、米国最大級の防衛関連企業であるRaytheon(レイセオン:本社マサチューセッツ州)のグレッグ・ヘイズCEOに対して行ったインタビューでも、米国の課題が浮き彫りになった。レイセオンには「中国に数千の下請企業があり、関係を断つことは不可能」であると、ヘイズが認めたためだ。
「リスクの軽減は可能だが、関係を完全に断つことは不可能だ」というヘイズの発言を、フィナンシャル・タイムズは報じた。「中国から撤退せざるを得ないとなれば、国内または友好国とのあいだで製造能力を再構築するのに長い年月を要するだろう」
一方、民主党のロー・カンナ下院議員(カリフォルニア州選出)は、7月に行われた電話インタビューで、米国の武器部品輸入に関して国防総省のデータが不足していることを批判した。
「構成部品の何%が米国で製造されているかが不明だ」とカンナはいう。「巨額の支出であるにもかかわらず、まったく監督されていない。この問題には対処が必要だ」
「国防予算が1兆ドル(約142兆円)近くに膨れ上がっているというのに、大砲すら満足に国内製造できないのだろうか? 軍需品のなかで大量生産が最も容易なのは大砲かと、私は思っていた」とカンナは述べた。「1兆ドルもの予算がありながら、なぜ製造できないのか?」
カンナは、国防予算の大枠を定める国防権限法案に修正を加え、国防総省に対して、物品および構成部品の購入に関する詳細情報の提供を義務づけようとした。これにより「軍需品の調達に関する脆弱性が可視化されるだろう。我々は少なくとも、現状を数量的に把握しなくてはならない」と、カンナはいう。
一方、米国国防総省は取材に対し「法案の起草に関してはコメントや声明を差し控える」とEメールで回答した。