欧州

2023.08.02 09:30

ウクライナ軍、改造ミサイルでロシア軍基地狙うも標的外す?

地対空ミサイルシステムS-200(Belish / Shutterstock.com)

ウクライナ空軍が1960年代に生産された古い地対空ミサイルシステムS-200の一部を地対地に改造したことは、既知の事実だ。重量8トンのV-860/880ミサイルに、GPS装置を追加したとみられている。

ただ、この改造弾道ミサイルが何を標的にしているのかは、はっきりしない。最初に確認された7月9日ごろの攻撃では、ウクライナ国境に近いロシア西部ブリャンスク州の工業地域が爆破された可能性がある。

7月28日に確認された2度目の攻撃では、V-860/880ミサイルがウクライナ国境から約32km、前線から160km離れた黒海沿岸の都市タガンログの一角に落下した。

だがそこには、軍事的価値があるとみられるものは何もなかった。ロシアによるウクライナの都市への攻撃がウクライナ市民を恐怖に陥れたのと同じように、ロシア市民を恐怖に陥れるためにウクライナ軍が貴重な長距離ミサイルをロシアの都市に無差別に撃ち込んでいるのでなければ、今回の攻撃は本来の標的を外した可能性がある。

そうだとすると、本来の標的が何だったのかを推測するのは難しくない。この都市の北西部にはタガンログ空軍基地がある。ロシア空軍はこの広大な基地から軍用無人機のオリオンやイリューシンIl-76輸送機、ツポレフTu-95爆撃機などを飛ばしている。

ロシアに占領されていないウクライナの主要都市の中で、同市に最も近いドニプロから発射すれば、タガンログ空軍基地はV-860/880ミサイルの射程に十分入るはずだ。ドニプロから発射されたV-860/880ミサイルが基地をかすめて6キロほど離れたところを通過したとすれば、28日のミサイル着弾地点とほぼ同じ場所に行き着く。

なぜドニプロなのか。冷戦時代、旧ソ連空軍はドニプロにS-200の砲台を置いていた。S-200は移動式ではあるものの、サイズと重量が大きく動かしにくいため、固定使用に適している。ウクライナ空軍がタガンログ空軍基地を攻撃しようと60年前のS-200を復活させ、それを使って発射したミサイルが、目標からわずかにそれたのかもしれない。

大型のV-860/880ミサイルは、整然と並ぶ燃料満タンの爆撃機や空輸機がひしめく空軍基地の駐機場を攻撃するのにうってつけだ。

これらのミサイルは重量約226キロの弾頭を搭載しているが、その破壊力は全体のほんの一部にすぎない。着弾の瞬間にタンクに燃料が残っていれば、弾頭の爆発効果に焼夷効果が加わる。大型の軍用機に当たれば、大火災を引き起こすことになる。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子・編集=遠藤宗生

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