欧州

2023.07.31 10:30

ロシアの新型高性能ミサイル、ウクライナ反攻の脅威に

軍事情報分析を行うOryx(オリックス)のシュテイン・ミッツァーがLMURに関する記事で指摘しているように、このミサイルは昨年6月にウクライナで初めて目撃され、Mi28ヘリコプターから発射されたとみられる1発が建物を攻撃した。その後の攻撃も、高価値の標的とされた建物に限定して行われたようだ。だが、ロシア側の標的の特定方法には疑問が残る。ロシア国防省は高機動ロケット砲システムHIMARS(ハイマース)2基を格納した建物にLMURが命中したと主張する動画を公開したが、ミサイルの照準は2階部分に合っており、ハイマースがどうやって2階に上がったかは説明していない。

Oryxによれば、ウクライナの反転攻勢が始まる前に、建物43棟、橋6本、トラック2台、装甲車5台がLMURによって攻撃された。現在、このミサイルは高性能のKa52攻撃ヘリコプターに搭載され、本来の対戦車用途で使用されている。

北大西洋条約機構(NATO)、特に米陸軍は、冷戦時代に対戦車ヘリのコンセプトを開発した。機動性が高く、離れた距離から攻撃可能なため、装甲車両の迎撃には最適だ。防衛線を突破されそうな場所に迅速に急行し、敵の攻勢を鈍らせることができる。ウクライナでは、それが功を奏しているようだ。

ロシアがLMURを搭載した新型Ka52Mを配備した事実は、ウクライナの反転攻勢を鈍らせるために全力を投じていることを示唆している。1発22万ドル(約3100万円)以上するLMURは供給不足で、複数の推計で200~300発しか調達できていないとされる。

ウクライナに必要なのは、パトリオットのような射程の長い防空ミサイルか、F16戦闘機やロシアの空軍基地を攻撃できる長距離兵器など、LMURを搭載したロシアのヘリコプターの脅威に対処できる能力だ。それがなければ、反攻は遅々として進まず、血まみれの展開となるだろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=荻原藤緒

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