地下40メートルの永久凍土から見つかったこの線虫は、クリプトビオシスと呼ばれる休眠状態に入ることで厳しい環境を生き延びていた。同じ場所にあった植物の名残を放射性炭素年代測定にかけたところ、4万5839~4万7769年前の更新世後期のものであることがわかった。
線虫がクリプトビオシスで生存していた期間としては、これまで確認された中で最長。線虫は新種で、Panagrolaimus kolymaensisと名づけられた。
永久凍土の中での4万6000年にわたる休眠から復活した線虫(A. Shatilovich, V. R. Gade, et al. 2023, PLOS Genetics)
ただし、線虫以外の生物では、さらに長い期間にわたり生存していた例が確認されている。病原菌であるバシラス(バチルス)属の細菌では、芽胞と呼ばれる状態で数千万年にわたり生存していたものが見つかった。
今回の線虫のように、危険な病原体が長期間の休眠状態から復活する可能性は、多くの科学者が懸念している。こうした病原体の多くは数千年にわたり凍結状態にあり、現代人が免疫を持っていない種類である可能性がある。
人類が引き起こす気候変動によって氷河や永久凍土の融解が進む中、病原体出現の懸念も高まっている。同じく27日、科学誌PLOSコンピューテーショナル・バイオロジーに発表された別の論文では、こうした懸念が浮き彫りとなった。
この研究では、ミシガン州立大学が開発したソフトウエアを使い、太古の病原体が現代に出現した場合のシナリオをシミュレーションした。結果、病原体の多くが生存・進化を続け、約3%が新たな環境で優占種となることが示された。
研究に参加したオーストラリア・フリンダース大学のコリー・ブラッドショー教授は、新たな病原体が出現するリスクは「もはや、対策を準備する必要のないファンタジーではない」ことがこの研究結果から示されたと指摘している。ただ、リスクの深刻さや必要な予防策を明確にするためには、さらなる研究が必要となる。
(forbes.com 原文)