そんな「分断」の解消にビジネスで取り組んでいるのが2019年のForbes JAPAN「30 UNDER 30」受賞者のひとり、ヘラルボニー代表取締役社長CEOの松田崇弥だ。福祉施設に在籍する知的障害のある作家とアートライセンス契約を結び、福祉を起点に新しい文化創造を目指している。
今年2月に第50回アニー賞で2部門受賞した長編アニメーション『ONI ~ 神々山のおなり』(Netflixにて配信中)を監督した堤大介も、自身がアメリカでマイノリティとして「分断」と向き合ってきた経験から、本作を制作した。堤は、米カリフォルニア州と金沢の2拠点をベースに活動するアニメーションスタジオ「トンコハウス」の経営者でもある。
ビジネスとクリエイティブの両面から「分断」に向き合う2人に、基盤となる考え方や価値観、問題意識について語ってもらった。後編では、アファーマティブ・アクションを含む昨今の社会の変化が中心議題となった。
前編>>心の中に宿る「闇」をなくすために。ビジネス、アニメに何ができるか│松田崇弥x堤大介
——前編で堤さんは、心に常に宿っている「闇」に向き合ってもらうためには、“答えを与える”のではなく一人ひとりが答えを得られるような機会をつくることが大切だとお話されました。松田さんはどう考えますか。
松田:機会のほかに、選択肢があることも重要だと思います。
日本は最近、国連の障害者権利委員会から「分離教育」に対して勧告を受けました。文部科学省は個別最適化された教育を推進するために、義務教育において障害のある子とない子の教室を分けています。
詰め込み式の教育を行うのであれば、それが正しいのかもしれません。でも、いろいろな価値観を育むことが教育の目的なら、みんな同じ教室で学ぶのもありだと思うんです。日本ではそれを選べない。それは子どもにとってもったいないことです。
学校以外でもそういった選択肢が増えていくといいなと思っています。
堤:僕が日本で通っていた学校は私立の小中高一貫校で、いわゆる自由教育の学校でした。クラスに身体的、知的障害のある子もいて、一緒に勉強していました。子ども同士で理解し得ない事もあったし、そこにどう向き合うのか、しょっちゅう話し合う時間を設ける学校でした。賛否両論あると思いますが、僕はすごく大事な価値観をいただいたと思っています。
その学校では、子どもが疑問に思った時に答えをくれなかった。そこには一人ひとりに選択肢があったんです。それについて話し合うことに時間を割くような教育でした。
堤大介監督
松田さんのおっしゃるように、いまの日本には選択肢が少ない。「WHY」と突っ込んで考えたら多くの人が納得できないだろう古いルールもいまだに沢山あります。それは、多様性を推進するにあたって大きなハンデになります。
へラルボニーさんのように、芯となる哲学を持って「お洒落でステキな事業」として人々に浸透させていくことでしか、社会は変わらないのだろうなと思っています。