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2023.07.31

TikTok、中国プロパガンダ広告を大量配信 欧州のユーザー数百万人に向け

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中国のバイトダンスが運営するTikTokが、欧州のユーザー数百万人に向けて、中国政府のプロパガンダ機関による広告を大量に配信してきたことが、7月20日に公開された広告ライブラリから明らかになった。広告の内容は、コロナ対策の都市封鎖を擁護するものから、万里の長城で遊ぶ愛らしい猫、新疆ウイグル自治区を観光地として宣伝するものまで多岐にわたっている。
 
フォーブスが広告ライブラリを分析した結果、26日時点で、人民日報やCGTNなど国営メディアの広告が1000本以上掲載されていた。これらの広告は、オーストリア、ベルギー、チェコ、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、イタリア、アイルランド、オランダ、ポーランド、英国の数百万人のユーザーに配信されている。
 
国営メディアがTikTokに掲出した広告の多くは、中国の経済や文化遺産を宣伝するものだったが、あるアカウントが配信した広告124件のうち、92件に新疆ウイグル自治区への言及があった。同自治区では、中国政府がウイグル族を弾圧しているとされ、米政府はこれをジェノサイド(集団殺害)と呼び批判している。
 
3月に公開された広告のひとつは、「新疆ウイグル自治区は良いところだ!」というキャプションの下、伝統的なダンスを踊る男性を映した動画だった。別のビデオでは、CGTNの司会者が新疆の小学校を訪問しており、ウイグル族の文化を紹介するツアーの宣伝もあった。
 
一方、中国の「一帯一路構想」に反対する欧米の試みを批判する学者を起用した広告もあり、中国政府の人権侵害について西側メディアが嘘をついていると非難するブロガーの動画を取り上げたものもあった。
 
新たな広告ライブラリのFAQページには、「TikTokはプラットフォーム上で政治広告や選挙広告を掲載しない」との文言があるが、「政府機関はTikTokのセールス部門と協力すれば広告を出す資格を得られる場合がある」とも記されている。
 
TikTokの広報担当者ジェイミー・ファバッツァは、中国の一帯一路政策に対する欧米政府の対応を批判する広告や、新疆ウイグル自治区の観光を宣伝する広告が、政治広告禁止ポリシーの下で許可されているかどうかという質問には答えなかった。一方で、人民日報や環球時報などの国営メディアがTikTokのセールス部門と協力しているかどうかを尋ねられたファバッツァは、同社は国営メディアを政府機関とはみなしていないため、政治広告に関するルールは適用されないと回答した。
 
TikTok は、米国のメタやグーグルと同様に、国営メディアが運営するアカウントにラベルを付けている。だがファバッツァによると、広告へのラベル表示はまだ導入途上にあるという。フォーブスが、「パンダのファンファンと一緒に中国の魅力的な一面を見て探検しよう!」と呼びかける@GlamourChinaというアカウントについて質問したところ、同社はこの広告に国営メディアのラベルを追加した。
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編集=上田裕資

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