あとは、MLBの理事会が最終審査をすることと、署名済みの移転契約書(非公開)に入っているはずの契約破棄条項に抵触しない限り、2027年(予定)の移転が確実になっている。
アスレチックスのファンが「チームを売ろう!」と叫ぶのは、チームが売却されれば、新しいオーナーが新しい球場をオークランドに建設して、ベイエリアにとどまることができると、そこに最後の望みをかけているからだ。
「残ってくれ」ではなく、「売ろう!」というのがジャイアンツ戦での呉越同舟のオラクル・パークに集まった4万人以上の観客の間でのシュプレヒコールであり、なんとも不思議なシュプレヒコールだった。
ファン不在の球団経営への抗議
オークランドにあったプロフットボールチームのレイダースはすでにラスベガスに拠点を移しており、オークランド市民はメンツをつぶされ、厳しい心情だと伝えられる。しかしそのなかで、オークランドの市長がラスベガスの市民に媚びを売るかのように、ラスベガスにあるマイナーリーグのチームの試合で始球式を務めるなど、状況はすでに後戻りの余地はないように思える。
オークランドは、サンフランシスコから橋を渡っただけだというのに、地価は著しく下がり、治安も激変して悪い。シリコンバレーの北端にあるサンフランシスコの企業に勤める人たちは、高給取りでもアパートも借りられないほどの家賃が高いので、オークランドから通う人も多い。
チャイナタウンも両市に存在するが、観光客で賑わうサンフランシスコのそれと比べて、オークランドのチャイナタウンは英語がほとんど通じない。グレイハウンドバスの発着場も、オークランド側では拳銃を持った警備員が常駐して、チケットのない者を排除している。
オーナーにしてみれば、「ここで野球をやっても観客を集められない」という主張は誰にも覆せないだろうという認識なのだ。今回の「逆ボイコット」のニュースにも、心ないファンから「アスレチックスが防弾チョッキを観客に配ればもっと人が集まるよ」という痛烈なブラックジョークも寄せられている。
それでもジャイアンツのファンが、アスレチックスのファンと一緒になって「売ろう!」というシュプレヒコールに加担したことは、ファン不在の球団経営に対する猛烈な抗議であり、普段はライバル意識を剥き出しにしていても、同じ野球ファンとしての強い思いに触れた一場面となった。
今後、追い詰められたアスレチックスのファンは、チームオーナーのフィッシャーの電子メールと電話に「チームを売却すべし」という大量のメッセージを送信する予定だと伝えられてもいる。