たとえば、最近別れた元交際相手が使っていた香水の匂いを嗅ぐと、脳内の特定の細胞グループが刺激され、その人に関する記憶が一気に蘇る。しかし、時が過ぎ、違う香りを好む相手と交際するようになると、脳は新たなエングラム細胞を生成し、現在の状況との関連性が強い情報を保存する。結果、過去の相手の香水の匂いを再び嗅いでも、当時の細胞グループを刺激する可能性は低くなり、記憶は「忘れられる」。ただ、その記憶が消去されたわけではなく、現在の状況での意味が薄れたため、取り出しにくくなっただけだ。
記憶自体は失われていないため、忘れたものを思い出す可能性は十分あると研究チームは考えている。ただ、アルツハイマー病など特定の疾患での忘却のメカニズムついても調べたところ、その結果は有望とは言えなかった。
研究チームは、病理的原因がある場合、生まれつきの忘却メカニズムが病気に乗っ取られていることを発見した。これにより、エングラム細胞のアクセスは極めて困難になり、記憶喪失はほぼ恒久的なものとなる。
まとめ
人間の脳は、ほぼ無制限の記憶容量を持っている。脳内では膨大なデータを継続的に処理しているため、時折些細なことを忘れるのは自然なことだが、物忘れを緩和する手段はある。家の鍵をしょっちゅう置き忘れたり、大切な約束を忘れたりする人は、スマートフォンのリマインダーアプリにこうした細かな情報を記録しよう。そうすれば、あなたの脳は新しいスキルや情報の取得といった、より重要な作業に集中できるようになる。(forbes.com 原文)