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2023.07.31 13:30

日本発・機械部品調達AIプラットフォームが世界を席巻する日

左から、芝田篤史 meviy Lab ジェネラルマネージャー、道廣 隆志 DTダイナミクス 代表取締役社長 、吉田光伸 ミスミグループ本社 常務執行役員、柳沢将人 meviy事業部 事業部長

労働人口不足と働き方改革による労働時間の減少というダブルバインドで、製造業の現場は苦しんでいる。そのなかでも「現場のボトルネック」と称される「部品調達」のソリューションに特化して、2019年にミスミが本格展開を開始したのが、オンデマンド機械部品調達AIプラットフォーム「meviy(メビー)」だ。

Web上にCADなどの3D設計データをアップロードすると、1分で見積もりをはじき出し、発注すれば工業レベルの高精度機械部品をロボット製作し、最短1日で出荷する。

かつて3カ月以上かかっていた部品調達期間を92%減らすことで、労働力・労働時間不足の問題を解決したこのDXテクノロジーは、「第9回ものづくり日本大賞 内閣総理大臣賞」(23年)を受賞するなど、高い評価を受けた。

そんなミスミが、九段下の日本武道館を見下ろす新オフィスにて、来し方を振り返るとともに、海外本格進出のヴィジョンや「メビー」を手がけるエンジニアリング部隊を「DTダイナミクス」としてスピンアウトしたことなどをアナウンスする事業説明会を開催した。


製造業のインフラを革新した、部品調達AIプラットフォーム「メビー」とは

1963年創業、ものづくり大国・日本の現場に必要な機械部品や工具、消耗品をカタログ販売してきたミスミ。製造業のインフラとして君臨してきた同社が見事にDXを成功させた部品調達AIプラットフォームが「メビー」である。

(Cap) 機械部品調達のAIプラットフォーム:meviy

機械部品調達のAIプラットフォーム:meviy


「meviy 事業説明会」と題されたイベントの口火を切ったのは、ミスミグループ本社 常務執行役員の吉田光伸だ。彼は製造業の現場に、「メビー」というイノベーションを生み出した背景を説明する。

「1980年代には『ジャパン・アズ・No.1』のかけ声とともに日本の製造業は隆盛しました。その背景にあったのは、増え続ける生産年齢人口(労働力)と長時間労働(就業時間)でした。しかし近年、生産年齢人口は激減し、働き方改革により就業時間が減少し、生産体制を維持することが非常に困難になっていました」

量から質へと、製造業の現場をアップデートできなければ未来はない。そこでミスミがDXに乗り出したのが、同社の専門分野の部品調達領域だ。

例を挙げると、1500の部品の調達は、従来はCADなどの3D設計データから手作業で作図し、FAXで見積もりを要請し、返事を1週間待った後、制作時間に約2週間の納期がかかっていた。その所要時間は約1000時間。

それら工程をデジタル化したメビーは、Web上に3D設計データをアップロードすれば即時見積もり、発注すれば自動で製造プログラムを生成し、製造ロボットなどで生産、最短1日で出荷可能なまでに、大幅に期間短縮(約80時間)を実現した。

「メビーの活用により、製造現場は部品調達時間を92%削減することができます。つまりそれだけの時間が、現場に創出されたとも言えます」(吉田)

メビーはバージョンアップを続け、製造対象部品の拡大やシステム刷新、UI・UXの改良を続ける。製造現場というニッチな需要ながら、現在は10万ユーザー/1200万アップロード規模にまで拡大。メビーもインフラとしての地位を着実に固め始めている。

そうしたメビーの成功は、21年のトヨタ自動車との共同開発や、22年のグローバル展開(21年ヨーロッパ、22年アメリカ進出済)につながったという。
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text by Ryoichi Shimizu / edit by Akio Takashiro

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