また、中国の賃金が先進国やアジア諸国と比べて急速に上昇している事実は、さらなるマイナス要因となる。ドナルド・トランプ前米大統領が導入し、ジョー・バイデン大統領が維持している対中関税も、中国の魅力をいっそう低下させている。
これら諸々が相俟って、諸外国の実業家や投資家の間では、説明のつかない治安捜査はもちろん、独自技術を中国側パートナー企業と共有するよう外国企業に求めるなどの中国政府の政策を容認しない風潮が広がっている。
こうした懸念は、中国で事業を行う米国企業やその他外資企業を対象としたアンケート調査にもはっきりと表れている。在中国米国商工会議所が最近実施した調査では、調査開始から25年目にして初めて、中国が好ましい投資先の上位から転落した。調査結果は、「投資を拡大する意欲と戦略的優先度は低下している」と総括されている。在中国欧州商工会議所が行った調査でも、同様の企業マインドの変化が見られる。
それに伴い、日本、韓国、欧米のマネーは中国以外の投資先を求めている。かつて独立性が高くリベラルな「特別行政区」であった香港では、中国政府の統制強化に反発した数十社がシンガポールなど他のアジア地域に拠点を移した。米物流大手フェデックスもそのうちの1社だが、多くは金融関連企業だ。
また、海運業界専門誌『Freight Caviar』の非公式調査でも、中国から他のアジア諸国、特にインド、タイ、台湾、ベトナムに事業を移す予定の企業が70社ほどあり、大手企業の韓国サムスン電子と米アップルも含まれていることが明らかになった。
サムスンは中国で携帯電話を生産していた大規模工場を完全閉鎖し、中国国内での雇用を大幅削減した。現在、インドに世界最大の携帯電話工場を建設している。アップルも、完全閉鎖まではいかないものの一部事業の拠点をベトナムに、時計とiPadの事業をインドにそれぞれ移転する計画だ。
事態は明らかに中国に有利には進んでいない。外国企業の再考や逃避の動きは、おおむね中国指導部の動向を反映したものであり、自業自得とも言える。個々の、または一連の政策決定が問題なのではなく、むしろ中国の権威主義体制の結果である。この観点からすれば、中国政府が事態を好転させる方法を見いだすとは考えにくい。
(forbes.com 原文)