欧州

2023.07.27 13:00

ウクライナ軍、バフムートを半包囲 ロシア軍の補給線断絶へ

遠藤宗生

Getty Images

ロシアのために戦う民間軍事会社ワグネルの部隊は昨年12月、ウクライナ東部ドンバス地方バフムートの南約16kmに位置するクリシチウカを占領した。

それから8カ月たった今週、ウクライナ軍がこの町を奪還。ロシア軍がバフムート南側に持つ同市への補給線を断つ好位置を確保した。

バフムートの戦いでは双方とも損失を被ったが、特にロシア側の損失は大きかった。ほぼ1年にわたる激戦の末、ロシア軍は5月、廃虚と化したバフムートを制圧した。

バフムートとその周辺では、何千人ものワグネル戦闘員や正規のロシア軍兵士、親ロシア派武装勢力のメンバーが命を落とした。バフムートに展開したウクライナ軍の防衛部隊はゆっくりと後退し、可能な限りの損害をロシア側に与えた。

バフムートはロシアにとって、ウクライナでの侵略戦争にまだ勝てることを証明する象徴的存在だった。一方、ウクライナにとっては、ロシア軍に血で報いる機会であり、時間をかけて作戦を練った反転攻勢の決行を前にロシア軍の戦闘力を消耗させるものでもあった。

6月4日に始まったウクライナ軍の反攻は、南部ザポリージャ州の他、バフムートのある東部ドネツク州でも行われている。第3・第5強襲旅団と第22・第28機械化旅団などの部隊は、バフムートのすぐ南にある野原と樹林帯を越えて攻勢をかけた。

第3強襲旅団は6月下旬、ロシア軍の第57自動車化狙撃旅団を攻撃し、重要な防御陣地であるドネツドンバス運河を越えて東に後退させた。第5旅団と第22旅団はここから、クリシチウカを西側から見下ろす峠へと進軍した。

あるロシア人ブロガーは「敵は隣接する別の高台を占拠し、対戦車システムや狙撃兵グループを組織してそこから前進する歩兵らを支援した」と戦況を報告。「激しい戦闘が数日続いており、敵の偵察機と攻撃ドローンが局面に重要な影響を及ぼしている」とも書き込んだ。

一方、第3旅団と第28旅団は、数キロ南のアンドリーウカに向かって進んだ。ウクライナ軍参謀本部のアンドリー・コバロフ報道官は7月25日、ロシア軍がアンドリーウカから撤退していると主張した。

その間、ウクライナ軍第57自動車化旅団は、北側からバフムート市内に入る幹線道路を目指してバフムートの反対側を前進していた。

こうして、ウクライナ軍はバフムートのロシア軍に対する半包囲網を狭めており、南側では同市に続く道路の1本を寸断した。もう一つの大きな道路は、数km東にある。

長期化したバフムート防衛戦でウクライナ軍が身をもって知ったように、道路は命だ。攻撃する側が補給路をすべて断ち切ってしまえば、その町での戦いは事実上終わる。

バフムートをめぐる戦いは1年以上続いている。同市から撤退したばかりのウクライナ軍は現在、その奪還を試みており、この戦いはまだ続くだろう。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子・編集=遠藤宗生

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