この種の古い微化石に関するこれまでの証拠は、岩石中の痕跡、有機物が分解された時に形成された化学残留物、あるいは地質学的プロセスだけでは説明困難な複雑なものなど、間接的かつしばしば疑わしい手がかりによるものだった。わずか5億年前、生物は炭酸カルシウムやリン酸塩などの鉱物を使って体の硬い部分を作る手段を手に入れ、生命体の保存可能性を飛躍的に高めた。この15億年前の化石は、研究者らが鉱山で見つかった鉱物を研究していた際に偶然発見された。
「原始的な微生物の化石を走査型電子顕微鏡で研究できる初めての機会を得られることはとても大きな喜びです。実際、私たちは鉱山で見つかった緑柱石とトパーズを研究するつもりでした。ここで見つけたものはどんな宝石よりもはるかに価値あるものです」とベルリン工科大学応用地球科学研究所の名誉教授ゲルハルト・フランツ博士は説明した。
「今、私たちが電子顕微鏡で見ているものは、主に繊維構造で、枝分かれした細いフィラメントか、小さな突起や凹みのある太いフィラメントです」とフランツは説明する。繊維の太さは、10~200マイクロメートル、長さは数ミリメートル(肉眼でも見ることが可能)で、中間に細い空洞のあるものもある。
「炭素同位体を分析することによって、発見物がかつて生きていた生物であったことも証明できました」とフランツは説明する。チームは、ある種の繊維の中にキトサンという物質があることも赤外線分光によって発見し、電子顕微鏡を用いてビスマス元素とベリリウム元素も検出した。
「これらすべてが、菌類に似た生命体を指し示しています」とフランツはいう。ただし、それは発見物の一部にのみ当てはまると付け加えた。「別の化石化した微生物の研究から、少なくともそれらが明確な細胞構造をもつ単細胞あるいは多細胞生物であったことは推定できます」。それらはおそらく、共通の生態系の中で菌類とともに生きていたのだろう。