ファッション

2023.08.12 16:30

「イタリア流家族経営」を次のステージへ エトロ新CEOの挑戦

生まれ変わったエトロの新しいチャレンジ

資本提携の結果、社員が総入れ替えされるようなケースもある。とかく新しさが重視されるファッション業界では起こりがちなことだが、カルディナリ、そして今後エトロのクリエイティブを担うデ・ヴィンチェンツォはそうしなかった。そこには新しいエトロを生み出さんとする、両者のプロフェッショナルとしてのチャレンジスピリットが垣間見えるのだ。 マルコ・デ・ヴィンチェンツォが新生エトロを表現する新しいクリエイティブビジョンとして、多彩な形式で発表されてきたプロジェクト「エトロピア」。その最終章「ワンダーランド・オブ・エトロピア」は、東京からスタートして世界各地をポップアップストアやインスタレーションなどで巡回する。同氏が手がけたアイコンバッグ「ラブトロッター」を、エトロのアーカイブファブリックと再生プラスチックハンドルで製作したサステナブルな限定モデルなどが販売された。

マルコ・デ・ヴィンチェンツォが新生エトロを表現する新しいクリエイティブビジョンとして、多彩な形式で発表されてきたプロジェクト「エトロピア」。その最終章「ワンダーランド・オブ・エトロピア」は、東京からスタートして世界各地をポップアップストアやインスタレーションなどで巡回する。同氏が手がけたアイコンバッグ「ラブトロッター」を、エトロのアーカイブファブリックと再生プラスチックハンドルで製作したサステナブルな限定モデルなどが販売された。


「ビジネスを成功させるうえで、私が重要な要素のひとつとして位置づけているのがチームワークです。専門性の高いプロフェッショナルが力を合わせ、各々がベストを尽くすことによってのみ、大きな目標は達成されるからです。マルコもチームワークやバランスを大切にするタイプであり、元々エトロに在籍していた社員と新しいスタッフを融合することで、完璧なバランスのチームをつくり上げました。彼は着任してすぐにスタッフたちから尊敬を集め、彼自身も新しいチームの一員として共に仕事がしたいと意気込んでいます。彼らは必ずや、生まれ変わった新しいエトロのチャレンジを成功させてくれるでしょう」

これまでプロフェッショナルとして培ってきた人々の技術や知識、感性を生かしながら、そこに新たなスタッフを融合し、バランスの取れたまったく新しいチームワークを生み出す。それがカルディナリの目指す、新生エトロの姿なのだ。フェンディのレザーグッズ部門のヘッドデザイナーを長年務めているデ・ヴィンチェンツォの手腕を生かした、メンズ&ウィメンズのレザーグッズへの注力や、市場の将来性が期待されるホームコレクションの充実、キッズコレクションの新設、新しいストアコンセプトの採用。

そして最も重要なマーケットとして位置づける日本で特に顕著という、顧客の高齢化への対処として、若者世代に響くデジタルコンテンツの充実やサステナブル商品の開発など、今後の具体策も目白押しというカルディナリ。新しい試みに次々とチャレンジし、スピーディにシフトアップする、生まれ変わったエトロの快進撃をかつ目したい。
統括的なクリエイティブ・ディレクターに就任したマルコ・デ・ヴィンチェンツォがエトロのメンズで初めて手がけた、2023年秋冬コレクションより。「エトロマターズ」と題されたコレクションは、エトロの原点であるテキスタイルとデ・ヴィンチェンツォの原点である子ども時代の記憶がオーバーラップしており、子ども用のブランケットから着想したコートなどが登場した。

統括的なクリエイティブ・ディレクターに就任したマルコ・デ・ヴィンチェンツォがエトロのメンズで初めて手がけた、2023年秋冬コレクションより。「エトロマターズ」と題されたコレクションは、エトロの原点であるテキスタイルとデ・ヴィンチェンツォの原点である子ども時代の記憶がオーバーラップしており、子ども用のブランケットから着想したコートなどが登場した。


ファブリッツィオ・カルディナリ◎イタリア出身。25年以上にわたり、ラグジュアリーファッションの分野で戦略的リーダーシップを発揮し、多くのグローバルブランドを成長させた実績をもつ。前職のドルチェ&ガッバーナには通算で約13年在籍し、要職を歴任後に2017年よりCOO(最高執行責任者)を務める。リシュモングループにも在籍経験があり、ダンヒルやランセルなどでもCEO(最高経営責任者)を務めた。2021年よりエトロ CEOに就任。

direction by Akira Shimada | text by Yasuhiro Takeishi

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