訴訟は24日、シグナから給付を拒否された女性2人によりカリフォルニア州の裁判所で起こされ、集団訴訟の提起を目指している。原告の一人は卵巣がんの疑いで超音波検査を受けるよう医師から指示された。もう一人は、医師の指示によりビタミンDの欠乏症の検査を受けた。
原告側は、シグナのデジタル請求システム「PXDX」は「保険契約に基づき支払われるべき医療費を組織的、不当かつ自動的に却下するための不適切な仕組み」だと主張している。
一方のシグナは、同システムを擁護。同社の広報担当者は「PXDXは医師への支払いを迅速化する単純なツールであり、メディア報道では著しく誤った説明がなされている」と主張し、誤った認識を正していく意向を表明している。
シグナが大量の請求を承認・却下するために用いているソフトウエアシステムの詳細は3月、米ニュースサイトのプロパブリカによる調査報道で明らかになった。原告側の主張によれば、このアルゴリズムは、医療機関の診断と、シグナが定める「その疾病に対する適切な検査および手順」との間にある不一致を検出する仕組みとなっている。
プロパブリカによると、昨年の2カ月間で同社は30万件以上の請求を却下しており、請求1件当たりの審査時間は平均1.2秒だった。却下はシグナ社内の医師の承認を得ていたが、システムは医師が患者の医療記録を実際に見ることなく却下を承認できる仕様になっていた。原告は、同社が請求を処理するための「合理的な基準」を採用しておらず、カリフォルニア州の法律に違反していると主張している。
AIなどの先進技術で現在起きているブームは、広告業から保険業まであらゆる業界を激変させる可能性があり、仕事の未来をめぐる疑問を生んでいる。医療業界では、こうした技術が医師による面倒な書類作成や診断を支援できる可能性がある一方で、患者のプライバシーや医療へのアクセス、高額な医療費といった面で問題を生む恐れもある。
こうした新技術を導入している企業はシグナだけではない。グーグルのクラウド部門は今年4月、医療保険の請求処理で、AIを使用してデータを整理して意思決定を効率化する新ツールを発表。ブルーシールド・オブ・カリフォルニアやブパなどの医療保険大手がこのツールを使用している。
原告の代理人を務める法律事務所クラークソン・ローは、これまでにもテック大手を相手取ったAI関連の訴訟を担当してきた。今月には、自身の作品の著作権を保有するアーティストや作家ら数百万人のデータを盗み、AI製品の訓練と構築に利用したとして、「ChatGPT」開発元のOpenAIや、生成AIチャットボット「Bard(バード)」を開発したグーグルを提訴した。
(forbes.com 原文)