※本記事はAIG損害保険による寄稿記事です
欧米の保険の「変換」を支える「国際法務の知識と経験」
グローバルリスクに強い損害保険会社といえば、やはりAIG損保だろう。215以上の国や地域におよぶグローバルネットワークを活かして、最先端の海外リスクにも対応をしているパイオニア的な存在だ。例えば、今では多くの損害保険会社で取り扱っているサイバー攻撃のリスクに備えた「サイバー保険」を業界に先駆けて日本に導入したのもAIG損保である。
ただ、実は海外の保険商品を新たに日本に導入するのは、かなり難易度の高い作業だ。
保険とは、保険金が支払われる場合、支払われない場合を取り決めた「保険約款」と呼ばれる契約の取り決めだが、これは国によって違いが生じる。法規制や商習慣が国によって異なるからだ。そのため、他国の保険商品を日本に持ち込もうとする場合、保険約款の内容を精査して、日本の法規制や商習慣に合わせて修正しなければならない。つまり、「日本仕様」にする必要があるのだ。
この難しい取り組みを可能としているのが、保険商品開発のスペシャリストの存在だ。各国の法律知識だけではなく文化や商習慣にも精通し、英語の約款を日本仕様に変換するスペシャリストの一人が、石井光である。
「AIG損保で事業者向け保険の商品開発に従事していると、海外のAIGのオフィスから保険商品に関する色々な情報が入ってきます。欧米では先進的な保険が次々と誕生していて、そのような商品を日本のお客さまにもご提供していくことが、日本のマーケットにおけるAIG損保ならではの役割だと思っています。ただ、日本における保険の認可によって保険で引き受けられる範囲が定められていますし、日本の顧客のニーズもふまえながら、欧米で開発された保険をそのまま持ち込むことができるのか、それとも日本の法規制や顧客ニーズにあわせて修正するべきかの検証が必要です。」
このような「欧米の保険を日本仕様に変換する」という作業において重要なのが、海外の保険約款を日本の法規制や商習慣に照らし合わせてローカライズすることだ。どのようなケースで保険金が支払われて、どのようなケースでは支払われないのか、さまざまなシチュエーションを想定して規定をしておかなければ、トラブルが起きてしまうおそれもある。そんな「約款作成」のプロフェッショナルが石井だ。
「海外の保険約款をそのまま日本語に直訳すると読みづらくなってしまうことがあります。一方で、意訳しすぎてしまうと本来の引き受けの意図から外れてしまうかもしれません。その微妙な調整をしながら約款を作成していくのは、かなり独特なスキルが求められますね。」
「誰が読んでも同じ結論にたどり着く約款」をどう作っていくか
石井がAIG損保に入社したのは16年前に遡る。大学卒業後に入社した総合商社で国際法務のキャリアを積みながら転職を検討していた際に、転職エージェントから紹介されたのがAIG損保(旧AIU保険会社)だった。「日本語だけでなく英語でも約款を作成できる人を探しているということだったのですが、正直なところ、はじめは“保険”と言われてもあまりピンときませんでした。でも、お話を伺っているうちに、私が商社の法務部で携わっていた契約書のドラフティングと似ているなと興味を持ち、自分のスキルが活かせると思うようになったのです。」
その予感は的中した。ニューヨーク州弁護士資格ももつ石井は、法律の知識と契約書づくりの経験を武器に、多くの保険商品の開発に携わり、気がつけば「約款づくりのスペシャリスト」になっていたのである。
その後、他業種に転職して再び法務やコンプライアンスでキャリアを積んだ石井は、かつて一緒に働いていた同僚から「戻ってこないか」という誘いを受け、21年7月、7年ぶりにAIG損保に復帰した。
「以前AIG損保で働いていた時から、いち早くリモートワークを導入するなど、仕事と家庭の両立に対するサポートが手厚くて、気持ちよく働ける会社だとわかっていたから」という理由に加えて、保険約款を極めたいという思いもあった。
「私が目指しているのは、“誰が読んでも同じ解釈と結論にたどり着く約款”ですが、これがなかなか奥が深いし、難しいです。あまりにも根を詰めて約款と向き合っていると客観的に見られなくなってしまうこともあるので、そういう時は、損害サービス部門の人たちに読んでもらい、私の意図が伝わっているか意見をもらったりします。」
損害サービス部門は、実際に保険約款に基づいて保険金の支払いをする人たちだ。約款解釈のスペシャリストであり、契約者の目線に近いということもあるので、彼らのアドバイスは非常に参考になるという。一方で、あえて保険約款に日常的に触れていない人たちに読んでもらうこともあるという。
「法務部門の方たちです。彼らは法的知識もあり、論理的思考に優れていて、より客観的な視点から見ていただけます。それまで気づけなかったポイントを指摘され、はっとすることもあります。」
そんな石井が次に目指しているのは、「未知の分野へのチャレンジ」である。現在、関わっているのは主に事業者向けの賠償責任保険なので、それ以外の保険の商品開発にも携わっていきたいと意欲を燃やしているのだ。
「慣れているところに安住するのではなく、新しいことにも挑戦したいです。AIG損保では、海外の取引先との貿易に関する取引信用保険や、国の情勢による不払いリスクに備えるポリティカルリスク保険などユニークな保険もあります。また、歴史的に損害保険の始まりである海上保険にもチャレンジしてみたいですね。」
AIG損保の保険は、海外でビジネスを展開する日本企業に多く選ばれている。なぜかというと、AIGならではというグローバルの知見を活かした「最先端の保険」も扱っているからだ。そして、その保険は石井のようなスペシャリストたちの「変換力」によって支えられているのだ。
石井 光(いしい・ひかる)◎AIG損害保険株式会社 大企業・中堅企業セグメント保険部門/シニアマネージャー・米国ニューヨーク州弁護士。2007年10月にAIU保険会社に入社し、2012年10月まで在籍した後に、他業種で法務・コンプライアンスの経験を積み、2021年7月にAIG損害保険会社に復帰。法務の知識と経験を生かしながら、主に商品開発の業務に従事している。
AIG損保のグローバルリスクマネジメント
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