音楽

2023.07.31 11:45

ハーバード卒のバイオリニスト、廣津留すみれの「チャンスの掴み方」

——2012年9月にハーバードに入学します。

順風満帆と思いきや、入学後は英語力が追いつかなくてとても苦労しました。乗り越えるためには人の50倍やるしかないと、図書館でほぼ寝ずに課題に取り組んでいました。ですので、バイオリンを弾く時間もあまりとれなくて。一般に「バイオリンは1日弾かなかっただけで下手になる」とよく言われますが、あれはきっとウソですね(笑)。

英語力は1年で追いつき、学業と並行してオーケストラのツアーやヨーロッパでの音楽修業などにも勤しむようになりました。3年生のときからは、チェリストのヨーヨー・マさんのグループ「シルクロード・アンサンブル」にも参加させてもらいました。

このヨーヨーさんとの経験があったからこそ、音楽としっかり向き合っていこうという決意ができました。彼は素晴らしいリーダーシップに溢れ、みんなのテンションをすごく“いいかんじ”に仕上げる方です。私が目標とする音楽家でもあります。

彼は、私に向かって「コンニチワ」とか戯けて話す一方で、真剣にも語るような人。みんな、そのギャップに魅了されていました。メッセージを共有し合った上で演奏するため、「なぜこの曲を弾いているのか」「音楽にどういう意味があるのか」を考えることが重要でした。

そうした想いがあってはじめて音楽家と言えるのだなと身に沁みて感じた出会いでした。

本格的に「音楽」が仕事に

——2016年5月にはハーバードを首席で卒業し、ジュリアード音楽院に進学します。音楽の道に進むことにしたのはなぜですか。

その時は、まだアメリカにいたいという思いと、音楽学校に一度は行ってみたいという思いがありました。

ジュリアードでは、オリエンテーションで友達になった4人でカルテットを組むことになり、そのまま2年間活動しました。カナダや日本でツアーもしました。それまでチームで集中的に音楽に取り組んだ経験がなかったので、いい学びになりました。

2018年に同大を首席で修了した後、「とりあえず1から自分で始めてみたい」という想いから、ニューヨークで音楽コンサルティング会社「Smilee Entertainment」を立ち上げました。仕事の半分は演奏活動でしたが、音楽と映像に演劇やダンスを組み合わせた企画のプロデュース、ゲームのサウンドトラックの作曲などにも取り組んできました。
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文=山本憲資 編集=田中友梨 撮影=小田駿一 衣装提供=Rene(https://www.rene.ne.jp/)

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