そんなiPhoneとともに15年を歩んできたのが、システム開発のアイリッジ(東京都・港区)だ。iPhone日本発売の翌月に創業し、一貫して流通業などのOMOを支援してきた。社名の由来も、iPhoneなどの「アイ」と海底山脈を意味する「リッジ」である。
アイリッジが得意とするOMOとは「Online Merges with Offline」の略で、直訳すれば「オンラインとオフラインを併合する」という意味になる。ビジネスの現場では「ECサイトなどのオンラインビジネスとリアル店舗の垣根を超えたマーケティング施策」として用いられている言葉だ。
同社が手がけたアプリの一例として、ファミリーマートの電子マネー「ファミペイ」、ブックオフのアプリ、飛騨地域限定の電子地域通貨として有名な「さるぼぼコイン」などがあり、合計で毎月8700万ユーザーが利用する。社名の知名度は高くないが、まさにOMOのリーディングカンパニーである。
企業のスマホアプリはどう進化した?
「スマホ普及当初のアプリは、ほとんどが『情報発信型』でした。そして『One to One型』に進化し、15年を経た現在は『OMO運用型』へと変化を遂げています」こう語るのは、アイリッジの創業者である小田健太郎社長だ。NTTデータを経て入社したボストン・コンサルティング・グループで、モバイル業界を中心に事業戦略や新規サービス立ち上げのコンサルを手がけた経歴を持つ。
モバイルが社会を変革していく可能性を強く感じたことをきっかけに、同社を立ち上げた。
アイリッジの小田健太郎社長
小田社長によると、「情報発信型」のアプリとは、新店のオープンや新商品などの情報を掲載するもの。アプリの黎明期ともいえる2008年から2012年ごろまで主流だった。アプリ利用者限定のクーポンも発行していたが、全員一律のものが中心。まさに従来の「ホームページ」を踏襲したものだった。
転換期を迎えたのが、2013年ごろだという。この年にはソフトバンクだけではなく、NTTドコモ、KDDIと主要3キャリアすべてでIPhoneが扱われるようになった。
そのころに登場したのが「One to One型」のアプリだ。これは文字通り、顧客ひとりひとりに応じた情報を発信するもの。例えばクーポンを発行するにしても、購買履歴や訪問店舗にあわせて、顧客ごとに最適化する。現在、大手小売業のアプリのほとんどが、このスタイルになっている。
2020年ごろからは、さらに「アプリ発展期」を迎える。スマホの大画面化、コロナ禍以降の非接触キャッシュレス決済の爆発的拡大、さらにLINEのミニアプリサービス開始など、アプリが内包すべき機能が、かつてないほど複雑さを増しているのが現在だ。