月間利用者数が多いアプリの秘密
このようにアプリの活用が複雑化する時代において、OMOで成功している企業はアプリを“運用型”へ進化させているという。「OMOアプリの成功のポイントは2つあります。ひとつは運用にどれだけの手間をかけるか。そして、もうひとつは実際の運用で生じた課題を解決し、時代に応じた機能を盛り込むための更新頻度を高めることです」
それは、同社が世界的なアプリ分析データ会社・アメリカのdata.ai社の協力を得て行った日本の主要な流通業のアプリのMAU(Monthly Actve User:月間利用者数)の調査結果にも現れている。MAUのトップ10は次のとおりだ。
1位 セブンイレブン
2位 UNIQLO
3位 GU
4位ファミリーマート
5位 ローソン
6位 ニトリ
7位 MUJI passport(無印良品)
8位 majica(ドンキホーテの手がける電子マネー)
9位 イオンお買物
10位 カインズ
さらに、これらのアプリを詳しく検証してみると、興味深い事実が明らかになったという。
バージョンアップの回数に注目したところ、上位10社は年間で平均10.1回。一方、101〜110位までのアプリは平均2.9回。3倍以上の差が開いていた。多機能化するスマホの進化に迅速に対応できることが、利用者の支持を集めるひとつのポイントになっているのだ。
「アプリビジネスのカギが更新や運用に移ってきた影響で、企業内の体制にも変化が生じています。以前はシステム関連部署がアプリを管轄しているケースがほとんどでしたが、現在OMOで成果を上げている企業の多くは、マーケティング部門がアプリを包括しているようです」
バージョンアップは難しい?
とはいえ、アプリの更新頻度を増やすのは大変で、現実のビジネスの現場では「言うは易し、行うは難し」の典型例でもあるかもしれない。実際に、アイリッジが大手企業を中心に30社に「リニューアルや機能拡張が十分に行えていない理由」についてアンケートをとったところ、「予算がない」が55%、「リソース(人員などの経営資源)がない」が40%となった。
「バージョンアップが大切なのはわかってはいるが、実際には予算も人も足りない」。それが多くの企業の現場で働く人が置かれた現実なのだ。
予算も人も潤沢に投じることができる大手企業は頻繁にバージョンアップを行うことができるので、それに応じて利用者数も増え続ける。反対に十分な経営資源を充てられない企業では、利用者数が減ってしまう。
また、マーケティングに必要なデータを蓄積するためにも、自らアプリを運用する方法が一番効率的だ。今後、アプリの世界でも「勝ち組」と「負け組」の差がますます広がってしまうのではないか。
こうした課題に同社も対応しようと、新たなサービスを開始した。既存のアプリを活かしながら、幅広い機能拡張、さらにはマーケティング施策の実行までを一気通貫で実行できるという「APPBOX」だ。
アプリのアップデートの必要性は直近でも高まり続けている。コロナの5類移行によってリアル店舗への来客が増えていることもあり、店舗と連携した多様な機能がますます必要となってくるだろう。
「iPhoneの日本発売とほぼ同時にスタートした当社は、この15年間、OMOの分野でリーディングカンパニーであり続けることができました。私たち自身も絶え間ないアップデートを続けることで、次の15年間もリーディングカンパニーであり続けたいです」